ひとりひとりが、会社や上司に面と向かって抗議する。そんなアクションは、実は「NO!」。自分の身を守りながら、女性が団結して社会を動かす――。これからの「戦い方」を解説します。
目の前の上司や会社と戦わず空気を変える
男女格差が大きい会社での扱い、セクハラやパワハラをする上司etc. 目の前の会社や人と対峙(たいじ)すると、なすすべは限られるが、「視界を広く持ってほしい。今、社会には女性の権利が守られ、働きやすくなるための、大きな風が吹いています」と断言するのは、ジェンダー・国際協力専門家の大崎麻子さん。
仕事での男女格差をなくす、性被害やDVなど、女性が弱い立場ゆえに起こってしまう「犯罪」をなくすために必要なのは、実行力のある法律を作るなど、まずは国が具体的に動くこと。そして、会社や社会の常識が変わることだと大崎さん。
「今、その方向に動くための大きな力が働いています。『国際協調』と『人材不足』です」
国際協調と人材不足 女性の生きやすさを後押し
「国際協調」とは、国連、G7、G20などで首脳が合意したことを、各国がお互いに協力・チェックし合いながら確実に履行しようという動き。「職場での性差別の撤廃とジェンダー平等の実現は、今、最も重要視されている合意事項。日本も先進国として、国際潮流に乗らないわけにはいかないでしょう」
2位 ノルウェー
3位 フィンランド
4位 スウェーデン
5位 ニカラグア
6位 ニュージーランド
7位 アイルランド
8位 スペイン
9位 ルワンダ
10位 ドイツ
53位 アメリカ
75位 タイ
106位 中国
108位 韓国
112位 インド
121位 日本
世界経済フォーラム(WEF)が2019年12月に発表した「世界ジェンダー・ギャップ報告書」の「2019年版ジェンダー・ギャップ指数」より編集部が抜粋。日本は2006年の指数算出開始以来、過去最低の順位。先進主要国首脳会議参加国(G7)でも最下位という結果に。
2019年6月、スイス・ジュネーブで開催された「国際労働機関(ILO)」の総会では、職場での暴力やハラスメントを全面的に禁止する初の国際条約が採択された。日本政府は、この条約の成立に賛成票を投じたが、批准は保留している。「批准するには、国は、現状では罰則規定がなく、実効性の低い法律を変えなければなりませんから、この条約への批准を求めることは、私たちが今すぐ始めるべき戦いです」
職場での暴力やハラスメントを全面的に禁止する初の国際条約。暴力やハラスメントを「身体的、心理的、性的、経済的に被害を起こしかねない行為」などと定義し、必要に応じて「制裁を設ける」ことを明記した。
2つ目の要因である「人材不足」。「新卒採用で、優秀な学生が古い体質の日本企業を嫌い、外資系企業に流れ始めたことに危機感を覚えた企業が、改革を始めています」
そのひとつが、女性と男性がフェアに働ける会社にすること。「女性の両立支援ではなく、男性の育休取得の奨励など、男女が家事・育児をフェアに分担できるようにする働き方改革、アンコンシャス・バイアス研修、ハラスメント対策に乗り出す企業が増えています。まだ一部の大企業のムーブメントかもしれませんが、徐々に広がっていくことが期待されます。ですから、働きやすい会社に転職するのも、重要なアクションです」
そして、大事なのは怒りの声を上げること。「SNSの登場で、個々の小さな怒りの声が、大きな力を持つようになりました。ハラスメントの根絶や賃金格差の解消など、女性がフェアに働ける環境整備を訴えるネット上の署名には参加する、自分が受けた被害や不条理な経験は、匿名でも構わないので共有することでも、十分に効果があります。団結し、ムーブメントをつくることが大切です」