仕事を突然失ったらどうする? 雇用形態で悩んでいませんか?女性の貧困につながるといわれる雇用のリスクについて、専門家の話を聞きました。

仕事と貧困

 派遣労働などをきっかけに陥りやすい、貧困のスパイラル。正社員の働き方改革が進まなければ、誰もが落ちてしまう可能性がある。

 2011年に国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩さんが、「ひとり暮らしの女性のうち、勤労世代で32%、65歳以上では52%が貧困である」と分析したリポートは、衝撃を持って報道された。さらに、母子家庭の貧困率は57%。15年の、同研究所のリポートで、30年には女性の生涯未婚率が18.9%になると予測され、女性の貧困は無視できない問題だ。

【貧困率とは】
貧困には、必要最低限の生活水準を維持するための食料や生活必需品を買えない「絶対的貧困」と、全人口の所得の中央値の半分に満たない状態を指す「相対的貧困」とがある。ここでいう貧困率とは、「相対的貧困者」の割合を指している。

 「貧困の原因の1つには、雇用問題がある」と言うのは弁護士の嶋崎量(ちから)さん。「特に派遣労働者は契約が有期で不安定な上、30代をピークに『市場価値』が下がるといわれ、40代になると収入が下がる傾向にあります」

 一方で、正社員は違法な長時間労働の常態化が続いている。「子育てや親の介護で長時間労働できずに正社員で働いていた会社を辞めて、時間に自由が利く派遣社員になる女性も少なくありません。正社員という安定を手放した結果、年齢を重ねるごとに不利になる、蟻(あり)地獄と呼ばれる状態に陥ってしまう人も出ています」

 そのようなリスクを回避するためには、「正社員の長時間労働の常態化がなくなること、派遣などの有期雇用を無期雇用とし、正社員に近づけていくこと」など、社会が改善に動くことが必須だと嶋崎さん。

 「そのためにも、職場でおかしいと思うことは改善を求めたり、不利な法改正にはNOと言ったり、一人ひとりが『権利』を主張することが大切。すぐに大きな変化はないかもしれませんが、その積み重ねが社会を変えます」

男女&働き方で賃金はこんなに違う!

 平成29年6月分の賃金について、平成29年7月に調査を行ったもの。各グラフの●印は、それぞれの性別と雇用形態における月収のピーク。