自身のセクシュアリティーについて率直につづった文章が共感を集める、エッセイストの少年アヤさん。傷つきながらも自分と向き合うなかで気づいた、「優しさの在り方」について聞きました。

「書くこと」を通じて自分の本心を見つけられた

 「男」として生まれながら、ミニカーよりも『美少女戦士セーラームーン』やリカちゃん人形が好きで、女の子とばかり遊んでいた子供時代。20代になるまで「男らしくないという罪悪感に悩んできた」と言う少年アヤさんが、気持ちを整理するために17歳で始めたのが、日々を綴ったブログだった。

 「好きなものを選んでいるだけなのに、笑われたり、『かわいそう』という目で見られたり。そのせいでずっと自信を持てなかったし、自分の本心も分からなかった。考えを文章にすることで、せめて自分が何を考えているのか知りたかったんです」

エッセイスト 少年アヤさん 1989年生まれ。自らのセクシュアリティーや家族について書いたブログが注目を集め、ウェブや雑誌でコラムやエッセイを執筆。著書に『少年アヤちゃん焦心日記』『ぼくは本当にいるのさ』(共に河出書房新社)などがある
エッセイスト 少年アヤさん 1989年生まれ。自らのセクシュアリティーや家族について書いたブログが注目を集め、ウェブや雑誌でコラムやエッセイを執筆。著書に『少年アヤちゃん焦心日記』『ぼくは本当にいるのさ』(共に河出書房新社)などがある

 アイドルに夢中になったり、レストランの店員にひと目惚ぼれをしたり……と日々を赤裸々につづったブログは注目を集め、執筆の仕事が増えた。一方で、「他人に期待される自分」を演じるようにもなってしまった。

 「一番大きかったのは、仕事の上で求められるままに『おかま』と自称してしまったこと。おかまらしく世間を斬るような番組の出演依頼をされたり、インタビューを勝手に女言葉にされたり。『こんなことは言っていません』と言っても、『分かりやすいから!』と押し切られて、そのままにしてしまいました」

 当時は、自尊心が低く、自分が嫌いだったから、自分をないがしろにしている状態も気持ち良かったと振り返る。「書くことと本心が離れていき、どんどん頭と心がバラバラになっていくような感覚に陥ってしまいました」

 そして、20代中盤、もう一度自分を取り戻すために、「おかまの自称はやめる」と宣言。執筆の仕事を休み、人付き合いも最小限に絞った。「1年くらいのつもりでいましたが、結果的に4年ほどかかりました」