情報「過多」時代ともいえる現代は、誰しもが、知らず知らずのうちに偏った情報に踊らされる危険性と隣り合わせ。あふれる情報との正しい付き合い方とは? メディアとジャーナリズムを研究する法政大学准教授の藤代裕之さんに聞きました。

情報の「質」と「栄養バランス」を意識すること

 「情報は、いわば脳の食べ物。食事と同様に『質』と『バランス』を意識しないと、頭の中がおかしな情報にむしばまれて、いつの間にか社会で通用しない人になってしまいます」

 そう警鐘を鳴らすのは、メディアとジャーナリズムを研究する藤代裕之さん。「情報『過多』な現代は、極端な情報でないと、人の目に留まりにくい。根拠のない噓や誇張も多いのに、それこそ『マスコミは伝えない真実』と、飛びついてしまう人が多発している状況です」

ちょっと待って、あなたが「食べている」その情報、どこの誰がどうやって作ったもの?
ちょっと待って、あなたが「食べている」その情報、どこの誰がどうやって作ったもの?

 分からないことがあればすぐ検索する勉強熱心なタイプも、実は注意が必要。ネットでは、アルゴリズムにより各人に最適な情報が表示される。つまり、自分の好みに合う情報が集まりやすい。にもかかわらず、「『真実を発見した』との高揚感で、他の意見が目に入らなくなりがち。過激な排外主義者や非科学的な説を妄信する人が急増しているのは、こうした背景からです」

 情報に踊らされないためには、プロが責任を持って発信するメディアと、玉石混交の情報が並ぶフリマのような情報源とを区別して捉えること。フリマ的情報源なら、疑ってかかる必要があるが、「逆にマスコミを疑い、製造元も責任者も不明なゴミかもしれない情報を、バクバク食べている人があまりに多い」

情報「過多」時代の実態
情報の作り手がプロアマ問わずたくさん
 ↓
情報が多すぎて極端な情報にしか、人の目が留まらない
 ↓
データや裏づけを無視して極端な意見を重視する人が急増
さらにアルゴリズムが「近い意見」を後押し

 今は多くの情報があふれているため、極端な意見が注目されやすく、データや裏づけのない情報を信じる人も多い。「それらを検索することで似た情報ばかりが目に入り、さらに確信を深めていく負のスパイラルにハマる」

 藤代さんは、今こそマスメディアの情報に立ち戻ることを勧める。「マスコミを過信する必要はないが、多くの人が見ていて、間違えれば謝る姿勢のある情報源をキープしておくことが重要」。それをベースに、多様な意見を取り入れれば、物事が立体的に見えてくると言う。「食事も情報も、ちょっとの意識の積み重ねが、将来大きな差となって自分に返ってきます」