信頼される「ハッキリ力」とは?

 言いにくいことは遠回しに言い、理由をくどくど説明したくなるが、「ネガティブなことこそ、ストレートに伝えること。その後に、申し訳ないなどの気持ちを添えましょう」と人材育成コンサルタント能町光香さん。「仕事では、一時的に嫌われないことより、長い目で信頼されることが優先です。悪いことも正直に報告していると、隠し事がない、一緒に働いて安心な人と評価されます」。その上で、建設的な提案もできる話し方を身に付けよう。

三大「言いにくいこと」の伝え方

1. 謝る

言い訳よりも「改善する意思」を
会議に遅れた謝罪を、「すみません。電車が遅れてしまって」だけではNG。「『このようなことが二度と起こらないように、次回から気を付けます』など、ミスを自分で引き受ける潔さが必要です」

「すぐに」謝る
謝罪が早いほど印象がいいだけでなく、早いリカバーでミスを大きくせずにすむ。出かける直前は避けるなど、タイミングは見計らって。

相手、ミスの内容に合う言葉を的確に選ぶ
親密度やミスの大きさによって、謝罪の強弱を変えること。「部署の先輩に、小さなミスで長い謝罪をすると、重くなりすぎ。それより、ミスをどう取り戻すか伝えるほうが建設的です」

例えば「打ち合わせの時間を勘違いしていた」なら…
▼予定をある程度予想できる部署の先輩
「すみません。明日の14時と勘違いしていました」
▼大事な取引先
「大変に申し訳ございません。明日の14時と勘違いしておりました。○○様の貴重な時間をいただいておきながら、このような不手際をお詫びいたします」

隠さずに事実は正直に報告する
「ミスをした“事実”については、1〜2文で手短に、正確に言うこと。遠回しに言うと、かえって誤解を重ねる可能性があります」。謝罪の後で、申し訳ない、以後気を付けるなどの気持ちを伝えて。


2. お願いする

上手に頼んでチームでクオリティーを上げる
自分で仕事を抱えすぎて期日までに終わらなかったら、かえって迷惑がかかる。「今はチームで仕事のクオリティーを上げる時代。上手に頼み事をしてくれるほうが、一緒に働きやすいと思われます」

「あなたじゃなきゃ!」の言葉を選ぶ
頼られると、実力を認められていると感じるので、気持ちがいいもの。“あなただから”を表す言葉で、その優越感をくすぐって。

【オススメのフレーズ】
「折り入ってご相談が」
「○○さんにお願いできるとうれしいです」

お願い内容は簡潔に伝える
お願い内容をくどくどと話すと、面倒なことを頼まれているような気になってしまう。何を、いつまでに、どうしてほしいのかが伝わるように、簡潔に説明すること。

最後に必ず感謝の言葉を
最後は「ありがとう」の言葉で結ぶ。「引き受けてもらったときはもちろん、今回は無理と言われても、『相談を聞いてくれてありがとう』と言うと、いい関係をつくれます」


3. 断る

次を考えるきっかけになる言葉を選ぶ
「『できない』ことが分かると、次にどうするか考えられる。断る行為は、建設的な会話に必要なものです」。理由を言う、代替案を出すなどして、言い切らないこと。

余計な言葉は言わず簡潔に
「時間があればできるんだけど…など、“余計な”言い訳をすると、『時間をつくってくれるのかな?』と、勝手に期待されてしまうことも。誤解のないように、ハッキリと断りましょう」

NGの時点ですぐに伝える
例えば飲み会は、すぐに伝えないとキャンセル料がかかるなど、マイナスが生じることも。「すぐに断るのがマナーです」

NOと一緒に必ず断る理由を添える
ただ断るだけでなく、「別の予定がある」など、理由を言うと納得されやすい。「さらに別日の提案など代替案があるといいですね」


谷原 誠
弁護士
谷原 誠 1991年に司法試験に合格し、企業法務、事業再生など、数多くの案件を解決に導く。著書に『「いい質問」が人を動かす』(文響社)などがある。
能町光香
人材育成コンサルタント
能町光香 リンク代表取締役。日本秘書アカデミーを創設し、秘書養成に力を注ぐとともに、講演や企業研修も行う。『言いにくいことをハッキリ言っても好かれる人の習慣』(すばる舎)など著書多数。

取材・文/岸本洋美(日経WOMAN編集部)写真/PIXTA