「全部読まない」読書の5ステップ

 鎌田さんに教えてもらった読書術は、本の選び方から本を閉じるところまで、5ステップで構成される。一つずつ順を追って見ていこう。

ステップ1・前書きと後書きがピンと来なければやめる

 前書きや後書き、巻末の解説などには、どんな内容を記した、どこが新しい本なのかがコンパクトにまとめられていることが多い。書店で表紙を見て興味を持ったら、まず立ち読みでここをチェックすれば、自分にとって必要でない本を間違って買わずに済む。

ステップ2・文章がスッと入ってこない本はやめる

 「内容の8割をすでに知っている本だからこそ、残りの2割の未知の部分を深く理解でき、有用な気づきになる」。知らないことばかりの本は、何も頭に入らず、苦行になりがちだ。また、文体などにより自分と相性が悪い本もある。スムーズに頭に入らない本はやめよう。

ステップ3・目次を見て読まない章を決める

 読むと決めて購入した本でも、「一部だけ読めばよい」という意識を持とう。まず目次を一覧して全体の構成を確認し、自分にとって必要と思われる章だけを選ぼう。そして、章立ての順番とは無関係に、優先順位の高い順に読んでいくのがコツだ。

ステップ4・「結論」と「太字」を先に読む

 読むと決めた章についても、先に大まかな結論を頭に入れてから読み始めれば、理解が早くスムーズに読める。結論は最終段落付近にまとめてあったり、本文中で太字になっていたりすることが多いので、1行目から読むのではなく、章末付近や太字を先にチェックしよう。

ステップ5・気づきを3つ得たらそこでやめる

 「時間や集中力は有限なので、1冊の本を全部読むのは欲張り」。たとえ面白かったとしても、有用な知識を3つ得たら、そこでひとまず本を閉じるという発想が大切だ。また、「特にビジネス書の場合、1ジャンルは3冊読めばほぼ網羅されるので、それ以上あさらなくていい

さらに読書効率を上げる2つのコツ

1. 読書の時間は確保しない

 読書を習慣化するために先にスケジュールに読書時間を入れる人がいるが、「本当の読書初心者にはある程度必要かもしれないが、読書が『義務』としてつらく感じられる原因になってしまう。それより常に本を持ち歩き、ふと気が向いたらすぐ読めるようにしておきましょう

2. 本棚は満タンにしない

 本好きの人ほど本棚は満タンになってあふれがちだが、「それだと本を出し入れしにくくなり、その後に改めて読み直して生かすなどのアウトプットにつながりにくい。本棚の2割のスペースは空けておくのがコツで、そのためにも定期的に、当面不要な本を手放すことが大切です」

鎌田浩毅
京都大学教授
鎌田浩毅 1955年生まれ。東京大学理学部地学科卒業後、通産省(現・経済産業省)などを経て、97年から現職。テレビや講演会で科学を明快に楽しく解説する「科学の伝道師」。近著『読まずにすませる読書術』(SB新書)。

取材・文/臼田正彦(日経WOMAN編集部) 写真/水野浩志(鎌田さん)、PIXTA