勉強したいけれど、時間がない、頭に入らない、長続きしない─。そんな悩みや心のモヤモヤを晴らすべく、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の共著者で哲学者の岸見一郎さんを突撃訪問。ギリシア哲学やアドラー心理学を通して人生との向き合い方を説き、また、自らも3年前から韓国語を勉強中という岸見さんに、学び続ける意味と、楽しく学ぶ極意を聞いた。

勉強したくても時間が全然取れない

編集部A(以下、A) 「WOMAN読者に勉強の悩みをアンケートで聞くと、一番多かったのは時間の壁でした。勉強したくても、時間がなくて挫折したり、断念したり」

岸見一郎さん(以下、岸見) 「時間がないから勉強できないというように、『AだからBできない』という論理を日常生活で多用することを、アドラー心理学では劣等コンプレックスといいます。Aは、できない原因ではなく、自分や周囲を納得させるための、いわば言い訳

ライターO(以下、O) 「確かに、すきま時間が全くないということはないでしょうね。でも、仕事や家事・育児に追われて勉強する気力や体力が残っていないというのが現実…」

岸見 「その『Yes, but…』も、課題から逃げようとする人が愛用する論理。『勉強できない』ではなく、時間がないから『勉強しない』と宣言しているようなものです」

A 「とんでもない! みんな本当に勉強はしたいんです!!」

岸見 「ならば『but』と言わず、できることを探すしかない。時間がないことを嘆くより、与えられた現実をどう使うかを考えるほうが建設的だと思いませんか? 私も子育てをしながら勉強していたので、その大変さは分かります。でも、赤ん坊を抱っこしてミルクをあげながら、論文を読んでいました。仕事や育児が重なっても、勉強できないわけではありません」

その勉強、本当にしたい?

O 「なんとか時間を捻出できても、お金がかかる、近くにいい学校や先生がいないという人も」

岸見 「ネット上には無料の学習サイトがたくさんあります。本気で探し、自分なりに工夫すれば、できることは必ずある。時間や機会がないことを勉強できない理由として持ち出すのは、動機が弱いのかもしれませんね」

A 「無理をしてまで勉強したいわけではない…?」

岸見 「自分はなぜ、何を学びたいのか。まずは動機や目的をはっきりさせることが肝要でしょう」