【メール編】「相手の非」への対応が自分の評価を左右
「いつも返信が遅い」「内容が意味不明」など、仕事相手の非をメールで伝えるときは要注意。「いくら相手に非があっても、上から目線のダメ出しメールを送っていると、もう一緒に仕事をしたくないと拒否されたり、『傲慢な人』などと悪い評判が立ったりする危険も」
言いにくいことを伝えるメールのポイントは次の3つ。
1. 相手を責めずに、非に気づかせる
思い通り動いてくれない相手を責めるより、「お願いした私にも原因がある」と自責の姿勢を示したほうが、「『こちらこそ悪かった』と相手に気づいてもらう効果があります」。
2. 「あなた」ではなく「私」を主語に
あなたを主語にすると、相手を責めるような断定的な文章になりがち。私を主語にすると「私はうれしい・助かる」など肯定的な文章になりやすく、柔らかく要求を伝えられる。
3. 上下のない、フラットな仲間意識を持つ
相手を「下請け」ではなく、「同じ目標に向かう仲間」と思っていれば「なんなりとご相談を」などの思いやりワードも自然に出る。思いが伝われば、相手のやる気も引き出せる。
こんなときはどう書けばいい? お薦めフレーズ
半面、書き方ひとつで相手の心をつかみ、やる気を高めることも可能。キモは相手を責めることなく、協働する姿勢を示す言葉選び。次の4つの「お困りケース」で極意を学ぼう。
1. 相手のメールの内容が分かりにくいケース
「おっしゃっていることがちょっと意味不明でして…」と返すのはNG。分かりにくい文章だからと一刀両断しては角が立つだけ。有効なのは「私の理解が正しいか確認したい」などの「私」を主語にした言い回し。「控えめな表現でも、『自分の文章は分かりにくいんだ』と相手は自覚します」
お薦めフレーズ…「私の理解」
・私の理解が正しいかどうか、念のため確認させてください
・~と理解しておりますが、間違いはございませんか?
「意味不明」の主語は「相手が書いた文章」だが、「理解」の主語は「私」。私を主語にすることで、相手を否定することなく、分かりにくい点の説明を求められる。
2. 期日を過ぎても返事が来ないケース
約束の期日を守らない相手には、「昨日までに提出していただくお約束でしたが、どうなっていますか?」などと問い詰めるのではなく、「進み具合を確認させて」とのスタンスで臨む。さらに「お困りなら遠慮なくご連絡を」と相手が言い訳できる余地を与えると、「遅れた事情を正直に話してくれ、善後策も立てやすい」
お薦めフレーズ…「進捗状況」「行き違い」
・その後、○○の進捗状況はいかがでしょうか?お困りのことがありましたらご遠慮なくおっしゃってください
・○○につきまして、ご確認をお願いできますか? 行き違いでしたら申し訳ありません
「進捗状況」も「行き違い」も、「私の都合で進み具合を知りたい」との印象を与えるフレーズ。「こうした婉曲表現でも催促されていることは相手に十分伝わります」。
3. 出来がイマイチな提出物を修正してほしいケース
「全体的にこちらのイメージと違いますので、直してください」などと言うのはダメ出し感が強く、相手のやる気をそぐ表現。9割方満足だが、最善を目指し少しだけ変更してほしいとのニュアンスを出せば、格段に印象がアップ。文末を疑問文にすると、文章のトーンがより柔らかに。
お薦めフレーズ…「調整」「相談」
・お手数ですが、調整をお願いしてもよろしいでしょうか?
・3カ所だけ、ご相談したいことがございます
「調整」も「相談」も、相手の自尊心を傷つけず、訂正を気持ち良く受け入れてもらえるキラーワード。「特に目上の人やプライドの高い人には効果的」
4. 立て替えているお金を返してほしいケース
気が重い督促には「敬意のサンドイッチ作戦」を。「立て替え金があるとの事実を、文頭のお礼と、こちらから出向くという敬意で挟めば、督促しても失礼な印象を与えません」。時間も指定すれば、本気度が、より伝わる。
お薦めフレーズ…「頂戴しに伺う」
・先週金曜日は飲みに誘ってくださりありがとうございました。その際の飲食代が1人5000円でした。本日の昼休みに、お席まで頂戴しに伺ってもよろしいでしょうか?
相手が支払うのではなく、私が頂戴しに伺うと、主語を「私」に転換しているところがポイント。「これを読めば、普通の人ならお金を返しに飛んでくるはず」
ビジネスインストラクター
取材・文/籏智優子