上司との会話や電話応対、取引先とのやり取りなどで、敬語がきちんと使えるかどうかは、社会人としての信頼感を大きく左右します。間違えて使っている敬語がないか、しっかりチェックしておきましょう。

正しい敬語は仕事のチャンスに

 「人は自分と共通点の多い相手に近づきたくなるもの。基本的な敬語が使える人は、同じような話し方ができる人に共感します。敬語がきちんと使えることで、幅広い人から信頼されます」

 こう話すのは、敬語講師の山岸弘子さん。敬語を学んだことで仕事を任せてもらえるようになった若い女性も多いという。

 また、「返報性の法則といって、丁寧な言葉で話すと相手も同じように話してくれる。敬語を身に付けて周囲から丁寧に扱われるようになったという人も多いですよ」。せっかくの敬語も間違えて使うと信頼感は失われる。仕事で好感を持たれるためにも、しっかり学んでおこう。

取引先との会話で使う敬語

相手の名前を確認するとき
△ 山本様でございますか?
○ 山本様でいらっしゃいますか?
「ございます」は「です」の丁寧語。間違いではないが、相手への敬意を表すには「いらっしゃる」が適切。


上司の意見を伝えるとき
× 部長がこのようにおっしゃっています
○ 部長がこのように申しております
社内で使うなら尊敬語の「おっしゃる」でよいが、取引先に対して上司を高めるのは不適切なので「申す」を使う。


プレゼンの最後に挨拶するとき
× ご拝聴ありがとうございました
○ ご清聴ありがとうございました
「拝聴」は謙譲語なので相手の行為に使うのはNG。他人が自分の話を聞いてくれたことを敬う「ご清聴」が適切。


相手の言葉の真意を聞きたいとき
× 〜と、申しますと?
○ 〜と、おっしゃいますと?
誤用する人も多いが、「申す」は謙譲語なので相手の発言に対して使うのは不適切。尊敬語の「おっしゃる」を使う。


部長に伝えたと言うとき
× 部長には申し上げました
○ 部長には申しました
「申し上げる」は取引先の前で部長を高めることになるので誤り。「申す」または「申し伝える」を使う。


上司から話を聞いていると伝えるとき
× その件は、部長の田中から伺っております
○ その件は、部長の田中から聞いております
謙譲語の「伺う」を使うと、取引先の前で上司を高める表現になってしまう。「聞いております」が適切。


相手の会社の場所を伝えられたとき
× 御社の場所は、存じ上げております
○ 御社の場所は、存じております
「存じ上げる」は人に対して使う謙譲語。「商品」や「場所」など、知っている対象が人以外の場合は「存じる」が適切。


飲み物の好みを尋ねるとき
× コーヒーで大丈夫でしょうか?
○ コーヒーでよろしいでしょうか?
この場合、「大丈夫」は口語的な表現なので取引先の前では不適切。「よろしいでしょうか」と丁寧に言う。


先方に手土産を持参したとき
× こちらのお菓子、皆様でご賞味ください
○ こちらのお菓子、皆様で召し上がってください
「賞味」は褒めながら味わうことなので、「ご賞味ください」という使い方は不適切。尊敬語の「召し上がる」を使う。


お悔やみの言葉を伝えるとき
△ ご愁傷様です
○ ご心痛のほど、お察しいたします
「ご愁傷様」も間違いではないが、儀礼的な印象を与えやすい。「ご心痛のほど〜」なら相手をおもんぱかった印象に。