◆本能6 パターン化本能

「1つの例がすべてに当てはまる」という思い込み

 私たちは「アフリカの国々」「アフリカの問題」とひとくくりにしてしまうが、実際には、チュニジアは平均寿命も長く1人当たりのGDPも高く、貧困にあえぐソマリアとは全く違う。人間には「1つの例がすべてに当てはまる」と思い込む本能がある。それが思考停止や物事への理解を妨げる原因に。

「ひとくくり」のなかの違いを探す

 1つの集団のパターンを根拠に物事が説明されていたら、疑うこと。その集団のなかに違いはないか、他の集団と共通点はないかを確認。大規模な集団には特に注意が必要だ。強烈なイメージは例外である可能性も疑うこと。


◆本能7 宿命本能

「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

 「男尊女卑が根強い日本では、女性は幸せになれない」と落胆する女性も、そういうものだと運命論で片づける人も、宿命本能に捉われている。実際には、女性の進学率も、就業率も上昇している。物事が変わらないと思い込み、新しい知識を得ることを拒めば、社会の変化も見えなくなる。

最新のデータを確認しアップデート

 社会や文化は、ゆっくりとした変化でも、変わっているということを意識しよう。1つずつは小さな変化であっても、積み重なれば大きくなるもの。最新のデータを積極的に取り入れ、知識をアップデートすることも必要。


◆本能8 単純化本能

「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

 「平等」というとシンプルで美しい概念に思えるが、それだけを信じ込むと、「格差」があらゆる元凶だという単純すぎる考え方につながる。すると、どんな場合でも格差はよくないし、資源の再分配によってなんでも解決できると思い込んでしまう。特定の思想に凝り固まると、1つの考え方や解決策にとらわれ、かえって社会に害になる。

自分が正しいと思う考えの弱点を探す

 自分が肩入れしている考え方の弱点を、いつも探すようにしよう。決して、自分が肩入れしている考え方が正しいことを示す例ばかりを集めてはいけない。自分の専門以外のことを、知ったかぶりせず、謙虚な気持ちを大切に。


◆本能9 犯人捜し本能

「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み

 悪いことが起きたとき、単純明快な理由を見つけたくなる。この本能のせいで、個人や集団が実際より影響力があると勘違いしてしまう。また、誰かが悪いと責めることで、複雑な真実から目をそらし、正しいことに力を注げなくなる。物事がうまく行っているときも、「誰かのせいにしたい」本能は湧き上がる。

1人が責められる事態に疑問を

 物事がうまく行かないときは、複数の絡み合った原因やシステムの理解に注力。誰か1人が責められている場合は、その状況に疑問を持とう。うまく行ったときも、1人のおかげでなく社会の仕組みを支える人々の功績と認めよう。


◆本能10 焦り本能

「今すぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

「今やらないと、もう次はない」―そんな言い回しが世の中にあふれているが、実際には今でなければダメなどということはない。目の前に危機が迫っていると感じると、焦り本能のせいですぐに動きたくなる。結果的に他の本能も抑えが利かなくなり、正しい分析や判断ができなくなるため、10の本能のなかでも特に注意すべき。

地道な一歩を冷静に重ねる

 「今すぐに決めなければならない」と感じたときは、まずは深呼吸! 未来について予測する「占い師」に注意すること。対策を立てるのなら、大胆なものではなく、1歩1歩効果を実感できる地道なものを選んで。