世界の女性は、まだまだ力を発揮できる
アンナ・ロスリング・ロンランドさん
仕事と家庭との両立に悩み、時にどちらかを選ばなければならない女性が多くいるのなら、それは悲しいことです。そんな人にこそ、「データを見て!」と言いたいです。女性を取り囲む問題の数々は、時間とともに良くなっています。他の国とも比較し、ロールモデルとなる国が見つかったなら、どんなふうに今に至ったのか、その始まりを調べてみてください。旅をして、実際に学ぶのもいいですね。
日本の女性には、行動を起こしてほしいです。海外の女性とネットワークを築いたり、自分たちが働きたいような会社を起こしたり。たくさんの言語を学べば、仕事の舞台を世界に広げられます。気の合う人たちと過ごす生活を実現すれば、子育てしながら仕事もやりがいを持って続けられる、そんな人生をイメージできるパートナーに出会うチャンスも増えるはずです。
私は、世界中の女性が力を発揮し切れていないと思っています。もっと多くの女性が社会の重要なポジションに就けば、より多くの、女性にとって有益な決定がなされるはずです。困難で、遅々として進まないかもしれない。けれど、世界中のすべての地域で、女性が主要なポジションに就く日が来れば、女性が仕事と家庭とを両立できないような古いシステムには後戻りしないはず。『ファクトフルネス』のものの見方が、そんな前進の助けになればうれしいと思っています。
「私になんて無理」と思うときこそ、10の本能を
関 美和さん
私が就職したのは、男女雇用機会均等法が施行されて2年目。電通に総合職初の女性社員として入社しましたが、先のキャリアプランが描けず、1年で辞めてしまいました。金融業界へ転身するきっかけは、『ハーバードの女たち』という翻訳書。1970〜80年代にハーバードを卒業した女性たちの10年後を追ったノンフィクションで、内容は、成績優秀な女性でも、一般企業での仕事と家庭は両立できないというもの。アメリカでさえまだ誰もできていないなら、逆に自分がやってやろうという気持ちになりました。
45歳で離婚してシングルマザーになったとき、「弁護士になろう」と法学部に進学したり(なれませんでしたが…)、経験はなかったけれど飛び込んだ翻訳の世界で仕事をできるようになったり。行き当たりばったりの生き方でなんとかなった私ですから、やりたいことがあるのに尻込みをしているのなら、「恐怖本能のせいじゃないか」と考えることをおすすめします。
女性の社会進出は30年前から変わらないという意見を見かけますが、実際には、育児休業の制度は以前に比べて充実してきているなど、環境は良くなっています。課題はまだまだありますが、「良くなっている」と「まだ悪い」は両立すると心に留めておけば、改善のための努力も無駄ではないと思えるはずです。「ネガティブ本能」にとらわれず、一歩を踏み出してほしいと思います。
取材・文/川端美穂〔きいろ舎〕 写真/矢作常明(関さん)、Johan Bodin(アンナさん)、スタジオキャスパー(アイテム) イメージ写真/PIXTA