買い値から値上がりするとすぐ売りたくなるのに、逆に買い値を下回ると、いつまでも持ち続けてしまい、塩漬け状態にしてしまう─。そんな理屈に合わない投資行動に走ってしまう人間の心は、経済学のひとつ「行動ファイナンス」で説明できます。投資をするなら、行動ファイナンスが明らかにした「投資の心理」を覚えておいて損はない!

 行動経済学会の角田康夫さんが挙げる「あるある」投資心理は6つ。

1.20万円儲かっても10万円の損がつらい
2.配当金は臨時収入、パッと使っちゃえ
3.チャートだけを見て「割安」と判断
4.理由はいいから上がる株を教えて!
5.愛しのA社株はきっと上がるはず!
6.株価のチェックでハラハラヘトヘト

 それぞれある理論で読み解くことができる。処方箋も挙げてもらった。一つずつ見ていこう。

1.20万円儲かっても10万円の損がつらい

 A社の株式を買ったら、値下がりして、10万円も損をしてしまった。すごく悔しい。その後、買ったB社の株式は値上がりして20万円の利益が出たけれど、A社の10万円の損が頭から離れない。

⇒【プロスペクト理論】
損のつらさは儲けの2倍以上

 人は損が大嫌い。「プロスペクト理論」によると、人は損失のダメージを、利益を得た喜びの2倍強く感じるという。持ち株が値上がりしたらすぐ売るのに、下がったときは損切りできずに含み損を抱えてしまうという傾向も、この理屈で説明できる。

【処方箋】
最初は損を我慢できる投資額で。徐々に増やして痛みに慣れよう。

2.配当金は臨時収入。パッと使っちゃえ

 A社の株式を10万円で購入したら、9万6000円に下がってしまった。けれど、その間に4000円分の配当金を受け取れた。値上がり期待の投資なので配当金は別腹。パッと使うつもり。

⇒【心の会計】
お金に色を付けてしまう

 配当金の4000円も、株式の値下がり分の4000円も同じ4000円。「お給料」「配当金」「株を売ったら入るお金」のように、人はお金を色分けしがち。このような心理を「心の会計」と呼ぶ。場合によっては、合理的な判断を妨げることもあるので要注意。

【処方箋】
お金に色を付け、ムダ遣いをしていないか、疑ってみることも大切。

3.チャートだけを見て「割安」と判断

 気になる銘柄を見つけたので株価チャートを調べた。昨年、株価は4000円前後で推移していたのに今は2000円台。これは安値で株式を買うチャンス?

⇒【アンカリング効果】
最初に見た価格に惑わされてしまう

 過去の株価を基準(アンカー)に、現在の株価の高・安を判断してしまう傾向を「アンカリング効果」という。4000円に戻るとは限らないし、単純に2000円台は安いと考えるのも危険。

【処方箋】
チャートだけに頼るのは危険。配当や業績などの指標も参考に。