一つのことをしながら、別のことも念頭に置いて仕事する――。先を予測して動く現代人は、常に「追い詰められている状態」になります。疲れた脳を休める「すきま瞑想」習慣で、健康的な心をキープしましょう。禅僧で精神科医の川野泰周さんに聞きました。

瞑想を習慣にして心を上手に整える

 「休日ゆっくりしているのに、疲れが取れない」「寝たのに、朝からすでに疲れている」など、慢性的に疲れを感じている人も多いはず。「スポーツなどの後、体の節々が痛むのでなく、なんとなく体が重いと感じるのは、脳の疲れかもしれません」と話すのは、禅僧であり精神科医でもある川野泰周さん。

 川野さんは、人間の心の構造を理論的に知りたいと大学で精神医学を学び、臨床医を経験したのちに、禅修行を経て実家の禅寺を継いだ。現在は寺務の傍ら、クリニックなどで精神科診療を行っている。

 「現代人は、目の前の仕事をしながら別の仕事の進行も意識するなど、複数のことを同時に行うマルチタスクの状態。さらに、皿洗いや掃除などの家事、辞書での調べものなど、無心でできる作業が機械に置き換わり、常に脳が『大事なこと』を考えています。時間を無駄なく使おうとする意識が、かえって脳を疲れさせているのです」

 また「迷惑をかけないようにしよう」などと自分以外に目を向ける場面が多く、自分が何に疲れているのかにも気づきにくくなっている。「それを防ぐために有効なのが瞑想です」。

 今回は、仕事の合間など、日常に取り入れやすい「すきま瞑想」を教えてもらった。

瞑想が「なんとなくグッタリな私たち」に効く5つの理由

1.脳が休まる時間ができて、回復力がアップする

 さまざまなことを同時に考えながら作業をするマルチタスクの状態は、脳を疲弊させる。「瞑想で一つのことに集中し、強制的にシングルタスクにすることで脳は休まり、リフレッシュします」。

2.自分を慈しむ時間で自己肯定感を得られる

 普段は自分以外のものに多くの意識を払い、脳のエネルギーを使っている。「瞑想によって自分の内面に意識を集中させると、自分自身をコントロールできるという自己肯定感が芽生えます」。

3.切り替え上手になることで、脳の使いすぎを防ぐ

 人間が一度にできることは一つ。「マルチタスクな人は、同時進行がうまいのではなく、気持ちや行動の切り替えが上手。瞑想を日常に取り入れることで、気持ちの切り替えがうまくなります」。

4.人生の楽しみを取り戻し、気持ちが明るくなる

 「五感の一つに意識を集中させることが『瞑想』です。食事中、視覚で料理を愛(め)で、味覚で味わうというように、一つひとつの動作を意識するのも瞑想。すると、当たり前の日常の豊かさに気づきますよ」

5.ネガティブな感情を受け流せるようになる

 瞑想中、悩みや気がかりなことなどが頭をよぎる……。「そんなときは、『悩むほど真剣に頑張ってる』『思い出した自分、えらい』と褒めてあげましょう。マイナスな気持ちもスッと流れていきますよ」。