集中力が持たない、先送りしたくなる etc. 脳のクセ

脳のクセ3・脳は…終わりかけるとやる気をなくす

→だから「もう一歩先の目標」を早めに設定

 脳は達成感などの報酬を得るためにやる気を出すが、「ゴールが近づいた」と認識すると、それだけである程度の達成感を得てしまい、意欲が落ちやすい。

 「アスリートも、ゴール間際の声援が『もうすぐだ』より、『まだまだ』のほうが成績がよくなりやすい。また、目先のゴールの先に、次のゴールがあると早めに意識することでも意欲を保ち続けられます

脳のクセ4・脳は…15分しか集中できない

→でも別の仕事に切り替えればまた集中できる

 「人間の脳は、1つの課題にそれほど長時間集中し続けられるようにはできていません。普通の仕事の場合は15分程度がキリのいい単位でしょう」。この際、15分ごとに休憩を取る必要はなく、「別の仕事に切り替えればいったん集中力が復活する」のだという。2つの作業を用意して、15分ごとに入れ子式にこなすと効率が良さそう。

脳のクセ5・脳は…同じ刺激を繰り返すと慣れる

→そこで「怒られる前にはリハーサル」

 必ず叱られることが予測できる悪い報告などは、誰でも先送りしがち。これにすぐ着手するのに有効なのが「リハーサル」だ。「脳は同じ刺激を繰り返し受けると慣れるため、事前に頭の中や、声に出してシミュレーションすると、実際に叱られるときのショックを抑えることができる。脱感作法といわれるテクニックです」

脳のクセ6・脳は…好きなものをチラッと見るだけでパワーアップ

 脳の線条体は、行動と快感を結びつけてやる気を出している。行動の最中に好きなものを目にすると、快感が直接呼び起こされ、やる気が高まりやすい。

 「仕事をしながら、時折チラッと目の端に飛び込んでくるくらいが効果的。パソコンの横にかわいいマスコットや、自分を励ます言葉のメモを置いておくのは有効と思われます」

脳のクセ7・脳は…儀式(ルーティーン)を決めるとすぐに集中できる

 引退したイチロー選手は、右手でバットを垂直に立てながら左手でユニフォームを引っ張る、独特の儀式(ルーティーン)で集中力を高めていた。

 こうした儀式は一般の会社員にも役立つ。仕事に着手する前に行う動作を決めておけば、その儀式をするだけで脳内の行動をつかさどる部分が動き出すようになるのだ。ただ、長く使うと儀式に慣れて効果を失うので、動作の中身は定期的な見直しを。

篠原菊紀
公立諏訪東京理科大学教授
篠原菊紀 1960年長野県生まれ。東京大学教育学部、同大学大学院教育学研究科を修了。現在は公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。学習時や運動時、テレビ視聴時など日常的な場面での脳活動を調べ、教材や高齢者の脳トレの開発にも従事。

取材・文/臼田正彦(日経WOMAN編集部)