脳が将来に向かって前進しにくいワケ

【理由1】脳の最優先事項は「死なないこと」だから

→新しいリスクを取ろうとすると「不安」や「面倒くささ」を使って邪魔をする

 「脳は『死なない』を最優先し、現状維持のために行動を邪魔してくる。これを『心理学的恒常性』といいます」

 そのために不安や面倒さを感じさせたり、できない理由にわざと気づかせたりする傾向があるという。「お化け屋敷でお化けの場所が分かれば怖くないように、脳がこうした感情をわざと出すと理解できれば、それにあらがう第一歩です」

【理由2】脳は「必要なことしか見えない」から

→将来の夢は「脳にとって不必要」なので、夢をかなえるための情報は目に入りにくい

 人間の目や耳は常に膨大な情報を受信しているが、「脳の毛様体賦活系は情報を選別してしまい、必要と判断したもの以外は認識しません」

 例えば、次のような実験がある。

 「これから30秒間、周囲の赤いものを探してください」と質問した後、「ところで、黄色いものは何がありましたか?」と尋ねると、探すつもりがなかった 「黄色いもの」はほとんど認識できず、「探しているもの以外は目に入らない」という結果が出ているという。

 「現状維持が大事な脳にとって『将来の夢』は不要。それをかなえる手段などの情報も認識しにくいのです」

【理由3】脳は「体験した記憶」に弱いから

→まだ体験していない「将来」は脳にとって印象が薄い

 「脳は日々の選択をする際、過去の記憶、それも感情と結びついた『情動記憶』に左右されます」。

 例えば、女子会に行く・行かないを考えるとき。「女子会に行かずに勉強すれば資格が取れる!」と頭で考えただけの内容と、「女子会の欠席者は悪口を言われやすい。自分がそうなったらつらい」と感情を伴った体験とでは、圧倒的に強いのは後者の感情を伴った体験。

 将来のために○○をしようと思っても、「将来」はまだ体験したことではなく、単に頭で考えたこと。体験済みの「○○が楽しかった」「勉強がつらかった」などの記憶には勝てない。

 「つまり、将来の夢を『感情を伴った記憶』にする必要があるのです」と星さん。

 次のページでは、「未来の記憶をつくって夢をかなえるメソッド」を4つ紹介します。