私たちに影響や感動を与えてくれる人やシーンの陰には、それを支える女性の存在がありました。今回は、そんな「舞台裏ノート」を特別に公開してもらいます。

瀬尾まなほさん
瀬尾まなほさん
「『人のため』が仕事の私。ノートで自分の本音に向き合います」

孤独な経験をきっかけに気持ちをノートに書き留めた

 90代後半に突入してなお、勢力的に作品を発表し続ける尼僧で作家の瀬戸内寂聴さんが、今“おちゃめ”な存在として注目を集めている。そのきっかけをつくったのが、秘書の瀬尾まなほさん。

 大学卒業と同時に、瀬戸内さんの事務所に事務として就職。4年前からは秘書として、瀬戸内さんのマネジメントを担当している。瀬尾さんのエッセイ『おちゃめに100歳!寂聴さん』(光文社)では、瀬戸内さんとのまるで友達のような関係が、素直な文章でつづられている。

 「自分で文才があるとは全く思っていませんが、中学生の頃からノートに文章を残すのは好きでした」と瀬尾さん。現在、彼女が愛用しているのが、本や音楽の歌詞など、心に響いた言葉を書きためていく「言葉ノート」と、毎日の出来事や気持ちを記録する手帳だ。

 「言葉ノート」をつけ始めたのは中学1年生のとき、クラスで無視されたことがきっかけ。「誰とも話せず孤独で、ヒソヒソと話す同級生を見ると、『私の悪口かな』と息が詰まりそうでした」。遊び相手がいない休日は、図書館に通った。そこで出合ったのが井上路望(ろみ)さんのエッセイ『十七歳プラス1』(ポプラ社)。

 「高校時代に受けたいじめ体験をつづった文章が載っていましたが、『息をするのも窮屈』『気を使いすぎる自分にうんざり』など、並んでいた言葉は私のモヤモヤした気持ちそのもの! 衝撃を受けて、彼女の言葉をノートに書き留めたんです」

 その日から、自分の心を「代弁」してくれる言葉をノートに書き残すようになった。また、吐き出せなかった自分自身の気持ちも、ノートに書くようになったという。いじめは約半年間で自然に終わったが、以来、ノートの習慣は続いている。