「そだねー」で相手を認め、自分の意見はその後に

現在は選手活動を休養し、15歳から22歳までの4人の選手の指導に注力。週3〜4回は自身もアイスに立つ
現在は選手活動を休養し、15歳から22歳までの4人の選手の指導に注力。週3〜4回は自身もアイスに立つ

 彼女はメディアにもメンバーにも、一貫して「楽しいカーリングがしたい」と話してきた。しかし、その理由を伝え切れておらず、「楽しい=ラクする、適当にやる」といった誤解を招いた。そこで「楽しむことは、競技に取り組む上で大切な原動力。でも厳しい練習に全力投球した先に、楽しさがある」とメンバーに改めて伝えた。「9割はつらい練習。その練習を少しでも楽しくするための一つの手法として、常にポジティブな声掛けを意識し、その場が明るくなるように努めました」。

 例えば、試合中のミスを「ごめん、できなかった」と反省の言葉で終えるのではなく、「次はこうするね」と前向きな言葉に変換するだけでも、チームの士気が高まる。「『そだねー』という掛け声も、相手の意見を尊重するポジティブな言葉。相手を認めた後に『でもこんな考えもある』と言えば、気まずくならずに意見を言い合えます」

 そんなポジティブで一歩突っ込んだコミュニケーションの積み重ねと、とにかくトライしてみるというメンバーの前向きさが、平昌五輪での銅メダル獲得へとつながった。

 ただ「銅には銅の理由がある」と本橋さん。金メダルを獲得したスウェーデンチームは、出産後に競技に戻り、「人生のなかにカーリングがある」と考える選手ばかり。個々が自立して考えがブレないので、ここぞというショットへの集中力に優れ、勝負を決める一投が放てるチームだという。

 「成功するヒントはカーリング以外にもたくさんあるし、進化し続けるために考えることをやめないことが、個々の自立につながるはず。個人が成長し、チーム力が高まった先に、金メダルがあると信じています」