企業のブランディングや商品開発を次々に手がける一方、人気ゆるキャラ・くまモンの生みの親としても知られる水野学さん。売れっ子クリエイティブディレクターは、どのようにセンスを磨いているのでしょうか。水野さんに、「誰でもセンスのいい人になれる」情報収集術を聞きました。
地道な情報の集積がセンスを決定する
「センスは特別な人だけに備わる才能ではありません」と水野学さん。「例えば、語彙が少ないより多いほうが、しゃれた文章を書ける。センスの良しあしは、ひとえに知識の量次第。歴史や流行、さらには『人々がどう考え、何を望んでいるのか』を知るという、地道な情報の集積が、その人のセンスを決定するのです」
ただし、情報収集にはスキルが必要と言う。「情報網が世界中に張り巡らされた現在は、人類の歴史上『網業革命』ともいうべき大変革の時代」。情報の受発信が容易になり、人々を分けていたボーダーが縮小。結果、ネットではマジョリティーとマイノリティーとの区別が困難になり、現実と大きな乖離(かいり)も生じている。だからこそ「どんな情報をどう捉えるのかというスキルが、これからの時代の鍵といえます」
水野さんが実践する情報収集術は、とにかく大量の情報に触れること。「新聞、テレビ、雑誌、ウェブ……あらゆる媒体を見ます」
その際、大事にしているのが、どんな意見も好奇心を持って聞くこと。「例えば芸能人のゴシップだって、それに対して人々がどんな反応を示すかということ自体が1つの情報。自分とは異なるものの見方を知ることは、脳内で旅をするようなもの。他者を知ることで、自分のセンスも磨かれていきます」
また、水野さんが重視しているのが情報の共有。LINEで会社のスタッフたちと、ニュースや本などの情報を気軽にシェアする。「他者の視点を知れるだけでなく、人に伝えるためには、一度その情報を疑い、自分なりにまとめ直す必要が出てくる。この一連の作業により、ぼんやりとした情報がしっかりと自分のものになります」
水野学さんが「今」の時代を捉える3つのキーワード
1. 網業革命
「網業革命」とは近年の情報ネットワークの急拡大により引き起こされた、私たちの生活の一大変革を表す水野さんの造語。「多くの人はまだ意識していませんが、18世紀の農業革命や産業革命に続く、人類の歴史的変革と捉えています」
2. ボーダーの縮小
従来、人は国や宗教ごとに区切られた見えないボーダー(壁)の中、マスメディアが発する情報でつながってきたが、世界中に巡らされた情報網により、ボーダーは縮小。「ひとりひとりが『小国』の主として、直接つながるように」
3. マイノリティーのマジョリティー化
これまで常識や世論はマスメディアを通じて形成されてきたが、「ネット社会では少数派の意見でも瞬時に拡散・共有されるため、マイノリティーとマジョリティーとの区別ができず、情報の価値判断も難しくなっている」
⇒みんな情報の海に戸惑っている状態。だから、情報収集のスキルが重要になる