グーグルで人材育成部門を率いた経験もある、ピョートル・フェリクス・グジバチさんによると、人生の停滞感を打ち破る鍵は、「すること」より「しないこと」を決めることだそう。その理由に迫ります!

「こなすタスク」を減らして価値あることに時間を使う

 毎日、今日やるべきことの「TO DO リスト」を作り、せっせとこなしている人は多いのでは?

 「タスクをこなすことで、私は頑張っていると満足する人がいますが、大事なのは作業をこなすことではなく、その作業によりどんな新しい価値を生み出すか。自分の人生になんの価値も生まないタスクをいくらこなしても意味がない」と、グーグルで人材育成部門を率いた経験もある、ピョートル・フェリクス・グジバチさんはぴしゃり。

ピョートル・フェリクス・グジバチさんの写真。「TO DOリストは危険ですよ」とピョートルさん
ピョートル・フェリクス・グジバチさん
プロノイア・グループ代表。ポーランド生まれ。2000年に来日。ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、11年にグーグルに入社し、人材育成部門を担う。15年に独立し、現職。組織開発のコンサルティング、コーチング、研修などを手がける。著書に『ゼロから“イチ”を生み出せる!がんばらない働き方』(青春出版社)など。

 タスクに急(せ)かされるように忙しく動き回っていると、本当に大事なことに気づくことすらできないまま、時間だけが過ぎていく。「特に日本の女性は真面目で、職場でも家庭でも求められることを完璧にこなそうとする傾向が強いように感じます。しかし、それで自分の人生を生きているといえるでしょうか」

 TO DOリストより、むしろ作るべきはNOT TO DOリストだと主張する。

 「今の1割程度の成長でいいなら現状のマイナーチェンジでもいいけれど、5倍10倍の飛躍を狙うなら、まずは『しないこと』を決めること」。今やる価値の低いことを手放せば、頭を整理する余裕もできる。その上で、真に価値あることに自分の時間や能力を集中投下してこそ、新しい価値を生み出していけるのだという。

ピョートルさんの「しないこと」

 ピョートルさん自身にも「しないこと」があるという。4つのしないこととその理由を教えてもらった。

□缶コーヒー以外飲まない
□黒いシャツ以外着ない
□新しい飲食店を開拓しない
□1対1では会わない

 まずはコーヒー。以前はスターバックスコーヒーなどでテイクアウトしていたが、最近はボトル缶タイプのブラックコーヒーを選ぶことに決めた。「自動販売機やコンビニなどどこでも買えるし、飲みかけでも蓋をしてかばんに入れられるのがとても便利!」

 着る服は黒いシャツのみ。季節を問わず、毎日同じシャツを着て服選びに迷う時間を完全になくした。シャツはユニクロの同じ型を10着所有。「黒に決めたのは、コーヒーやワインをこぼしても目立たないし、皆さんの自己実現を手伝う『黒子』でありたいという思いから」

 飲食店を開拓しないことについては、「店選びに時間をかけるのは馬鹿げた話」と説明する。誰かと食事をするときは、相手のニーズを聞き、なじみの8店舗ほどのなかから選ぶ。「あれこれ言わなくても、店主がこちらの好みや会の目的を察して動いてくれるので、確実にいい時間が過ごせます」

 人との出会いは大切にしているが、1対1で会うのは深い対話ができ、刺激を与えてくれる人に限る。それ以外の人とは、1対1では会わない。「登壇するイベントに来てもらうなど、短時間で同時に多くの人に会います。時には会うこと自体を丁寧に断ることも