万年筆のインクにこだわったり、用途に合わせて文具を替えたり。「文具好きのあの人」は何にこだわっているのでしょうか。文具と生活とのすてきな関係を、文具ライターの小日向京さんに聞きました。

日々にメリハリ 文具と生活とのすてきな関係

 同じ鉛筆1本でも、ピンととがらせた芯に触発されて書き物が進むこともあるし、逆に丸まっていたほうが、気分が乗ることもある。そんな「按配」を大切にしないと、目の前のことがにっちもさっちもいかなくなる─。そんなふうに、文具と自分との関係を語る女性がいる。文具ライターの小日向京さんだ。

文具ライター
小日向 京さん

1968年東京都生まれ。共立女子大学大学院修了。文具雑誌を中心に、文字を書くことや文具について著述するほか、文具アドバイザーとしても活躍中。近著は『惚れぼれ文具 使ってハマったペンとノート』(枻出版社)。

 「撮影に何を持ってくるか悩んでしまって」。そう笑いながら、バッグから取り出したのは、3本差しのペンケースに収められた万年筆や使い込まれた手帳、美しいはがきなどの文具の数々。どれもきれいに手入れされ、「愛用している」ことがすぐに分かる。

 「日記は、翌日の朝、書いています」と言う小日向さん。「朝の文字って、まだ眠たそうな形をしているんです(笑)。けれど、日記を書き進めるうちに、徐々に文字が整っていく。すると、気持ちも整って、1日を頑張ろうと背筋が伸びます」

 日記は、万年筆や、ボトルインクと「つけペン」で書く。「その日の気分で筆記具を決めたり、季節に合わせてインクの色を変えたり。忙しい日常のなかで、筆記具を選ぶ時間は、贅沢なひととき。『なぜ文具をそんなに集めているの?』と驚かれますが、1つ1つ使い心地が違う。それを楽しむことで、日々にメリハリが生まれます

 次のページでは、そんな小日向さんの愛用文具たちを紹介します。