時間がない。集中できない。せっかく読んだ本の内容が思い出せない…。「読書をしたほうがいい」とは思っているのに、自分に合う方法が見つからなくて悩んでいるビジネスパーソンは多いはず。この連載では国語講師の吉田裕子さんが、誰でも簡単に実践できる「頑張らない読書術」を伝授! 第1回は、「読書ができる環境」を整える方法を解説します。

思うように本が読めない悩み

 「『本を読んだほうがいい』とは思っているけれど、なかなか習慣化できない」

 「あまり本を読んでいない自分が恥ずかしい……」

 国語講師として大学受験塾や企業研修で指導をする中で、たくさんの人たちから、このような悩みを打ち明けられました。「読書離れ」が問題視されて久しいですが、実際、「本なんて読んでも意味がない」と言い放つ過激派は少数。多くの人は、思うように本を読めていない状況に悩んでいたのです。

 そこで、この春『明日の自分が確実に変わる10分読書』(集英社)という本を上梓しました。まずは、小・中学校の「朝の読書(朝読)」のように、10分だけ読むことから始めませんか、と提案したのです。

 読書に挫折する人は、高い目標を掲げ過ぎて三日坊主になってしまうパターンが多いです。逆にいえば、読書を習慣化するコツは気持ちのハードルを下げること。10分だけ、と気軽な気持ちで始めるほうがいいのです。

 たかが10分、といっても決してバカにできないんです。10分でも1週間で1時間強、1カ月で約5時間。5時間あれば、だいたい1~2冊の本を読むことができます。

 文化庁の「国語に関する世論調査」(2018年度)によれば、47.3%の人が1カ月に1冊も本を読まないそうです。ということは、月に1冊以上読むだけで、本を読む側の上位半分に入れるわけです。これは小さな一歩ですが、実は大きな一歩。0を1にするのは大変ですが、1を2、2を3に増やしていくのはそこまでの壁ではないですから。