PDCAでは周回遅れになる

「PDCA」が万能だという発想はいったん捨てよう
「PDCA」が万能だという発想はいったん捨てよう

 PDCA、という言葉をご存知でしょうか。いわゆるビジネス用語で、簡単にいうとPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことによって、仕事上の生産や品質管理などの業務を、延々と改善していく考え方です。例えばPDCAのP(Plan)は、会議をしながら業務計画を練る段階のことです。

 しかし混沌の時代では、PDCAでは周回遅れになってしまいます。なぜなら、SNSによって誰でも発信力を持っているため、あなたがたった今思いついたアイデアを、同時に思いつき、発信している人がいるかもしれないのです。下手に計画を練って頭でっかちになると、かえって時間ばかりが過ぎてしまうでしょう。

 それよりも実際に体を動かし、Do(行動)を先に起こす「DCPA」サイクルを回していくべきだと思います。つまり、計画を練る前に、先に行動しながらトライアンドエラーを繰り返し、微調整していけばいい、ということです。

合言葉は「フラットにDo」!

 例えば、かつて僕がiモードの立ち上げに関わっていたとき、立ち上げメンバーだった松永真理さん(現:バンダイ取締役)は、20年前の当時、すでにこの「DCPA」サイクルを地で行く人でした。彼女は非常にフラットで、一度アイデアを思いつくと誰にでも話しかけ、「どう思う? 好き?」と言語化していくのです。普通なら、延々と会議しながら話し合うところを、彼女は真っ先に席を立ち行動する人でした。

 さらに彼女は、社外の人や、特に自分とは環境や価値観が異なる人に対しても、よくアイデアを話していました。例えば相手が母親なら、同じ社内にいる人に使う用語ではなかなか伝わりません。自ずと、誰にでも分かるフラットな言葉を選ぶようになり、その思考過程の中でだんだんとアイデアが整理され、最後にはアイデアそのものが誰にでも喜ばれる普遍的なものへと昇華されていくのです。

 彼女は、いわば「世間話の達人」です。思い立ったら計画を練るより、すぐに「Do」しながら様子を見ていく人なのです。

 混乱の時代に求められるのは、松永さんのように、フラットにDoできる人ではないでしょうか。そして繰り返すようですが、この「フラットさ」を保つためには、案外リラックスすることも必要だったりするのです。綿密なプランをぎゅっと練るより、散歩ついでに会議室のドアを開け、会話を楽しみながらアイデアを広げていく……そんな軽やかな姿勢こそが、本格的に求められる時代になりました。早速、新しいドアを開けていきましょう!

取材・文/小野田弥恵 イメージイラスト/PIXTA