AIやネットの進化で変化のスピードが加速する中、成功する組織の在り方も変わってきています。そんな時代をリードしていく鍵になる発想として、尾原さんは「自分の中の“ラブレター”を探してみて」とアドバイスします。一体、どういうことなのでしょうか。

 皆さんは「女神的リーダーシップ」(プレジデント社)という世界的に大ヒットした本をご存じでしょうか? これは、新しい時代のリーダーに求められる資質が、「共感力」や「表現力」など、女性に特徴的な能力に変わってきている、という内容の本です。

 個人的には、これらを女性特有のものとすることには少し疑問もあるのですが(共感力の高い男性もいますし、逆に相手の気分が気にならないからこそ、スパッと意見できる女性だっています)、一方で、今後のビジネスシーンに求められる人材を知る上で、とても参考になる本だと思います。

 そもそもこの本、元の英題は「アテナ ドクトリン」でした。和題は「女神的、つまり女性特有の力がビジネスで求められている」という印象も受けるタイトルなのですが、英題本の文脈では、「ギリシャ神話の神々の中で、女神・アテナのような力を持つ人こそ、今求められている」と主張しているのです。そこでこの記事では、女性特有ではなく、あくまで「アテナ的な能力」として、今求められている人材像についてご紹介します。

組織が変われば、求められるリーダーも変わる

 この本によれば、ここ数年、世界で成功しているリーダーが示す特徴の多くは、「誠実」「利他的」「共感力がある」「表現力豊か」「忍耐強い」ことなどが挙げられます。

 かつてのトップダウンな組織の中では、相手の裏をかいたり、利己的で意思が強かったり、相手の気持ちをくまずに命令できる人のほうが優秀とされがちでした。しかし、今後はAIやネットの進化で世界中の人々がライバルになります。新たなシステムやビジネスモデルが次々と生まれて、昨日までは勝者だった企業がある日突然転落することだってどんどん始まるでしょう。

 そうなると、これまでのような数字だけを追う市場マーケティングでは、消費者行動を読むことが難しくなるのです。企業も柔軟に戦略を変えないといけないので、おのずとトップダウンな組織体系では立ち行かなくなります。そこで、仕事で未知の壁に直面したとき、部下の意見に耳を傾ける「共感力」や「謙虚さ」、その声を周囲に伝える「表現力」を備えたアテナ的な素質を持つリーダーがいる企業こそ、よりよい解決策を見いだしていけることが、既にデータで分かっているのです。