起業家の間でサウナがはやる理由

 ある知人女性からこんな話を聞きました。彼女の職場では、ホットヨガにハマる人がとても多いそうなのです。その理由を聞いてみると、「ホットヨガをしている最中は、熱と呼吸によってだんだん頭の中が空っぽになって、何も考えられなくなる。でも一番気持ちがいいのは、ヨガをした後。冷たいシャワーを浴びた途端、身も心も一気に解放されて、すごくスッキリするの」と説明してくれました。

 この言葉に、僕は「なるほど!」と膝を打ちました。実は、一時的に肉体を追い込んだ直後、一気に解放感を与えることでストレスが解消されることを証明した研究があります。実際、僕の周りの起業家の人たちの間では、サウナがとてもはやっています。

 例えばあなたの周りにも、普段はとても忙しいのに、休日になると登山をしている人はいませんか? はたから見れば、「なぜ休みの日まであんなに疲れることをするのだろう?」と疑問に思うかもしれません。ただ登山も、ホットヨガと同じ。まず、一時的に肉体を追い込むことで頭が空っぽになります。そして山頂に到着したとき、一気に景色が開け、解放感を味わえます。こうした点では、登山もホットヨガも、同じストレス解消要素のある行為なのです。

 人は不安になると、その不安の原因を突き止めようと、ぐるぐる考え込んだり、悩んだりしてしまう生き物です。ですが、不安とはそもそも目に見えず、根拠もよく分からないものです。それなら、頭を回すことを一旦やめてしまったほうがてっとり早いのです。

 そのために、ホットヨガや登山などのアクティビティーはとても有効です。しかも、一度不安から解放されてしまえば、人は「不安ではない状態」で物ごとを眺めることができます。すると今度は冷静な目で、自分を見つめられるようになるのです。

自分なりの方法を見つけよう

 変化の時代では、まず自分の疲れの種類を見極める必要があります。単なる肉体疲労からくるのか、退屈からくるのか、それとも先が見えない不安にやられているのか? それらが分かれば、取るべき行動が決まります。

 もちろん、解消する方法は、ホットヨガや登山ではなくても、

・一時的に肉体を追い込むこと(没頭)

・その後、一気に解放感を与えられるもの(解放空間)

の2つの要素を備えたものであれば、スポーツなど何でも構わないと思います。自分に合う切り替え方を見つけておけばいいのです。

 例えば、僕の知人女性は、毎朝仕事の前に神社へ通っているそうです。その神社は、急な階段をいくつも登った丘の上にあるそうなのですが、階段を上がり切って、神社の前までたどり着くと、不思議な解放感があるといいます。朝の神社は、それが街中であっても、まるで異世界のような雰囲気があるため、一気に気分が切り替わるのだとか。これは、登山の要素を圧縮させた体験といえそうです。

 これが習慣になってくると、もしまた不安に陥ったとしても、勝手に体が動いてくれるようになります。不安になって考え込む前に、その状態から抜け出せるようになるのです。そうなれば、ぐるぐる悩むこともなく、余計な不安が取り払われ、本当は何とどう向き合えばいいのかが、おのずと見えてくるのではないでしょうか。

取材・文/小野田弥恵 イメージイラスト/PIXTA