周囲の人を頼るのは怖い、無責任と思われそうな気がする……。そんな気持ちから、ついつい一人で無理をしてしまった経験、ありませんか。尾原さんは「他人に迷惑をかけてはいけない」という思い込みが、自分を苦しめてしまうことがあると指摘します。そこから抜け出すためのちょっとしたエクササイズを教えてもらいました。

 仕事でキャパオーバーになると、ついミスをしてしまいがちです。そういう時、「どうしてもっと早く、他の人に振らなかったんだ」「なぜもっと周りをうまく頼らないんだ」と注意された経験はありませんか? または、誰かに頼むのが面倒だったり、言いにくかったりして、結果、いつも残業になってしまう人も多いのではないでしょうか。

 ミスの多くは、「他人に迷惑をかけてはいけない」と思い込むことで、「助けて」の一言が言えなかったり、一人で引き受け過ぎてしまったりして起きるものです。これは、日本人特有の習性なのではないか、と私は思っています。

自分にも他人にも厳しくなりがちな私たち

 日本の多くの親や学校の教師は、子どもに対し「人に迷惑をかけちゃいけませんよ」と教えていたことが多かったと思います。これが「迷惑をかけることは悪いこと」という強い刷り込みになり、誰かに教えてほしいことや、頼みたいことがあっても、「迷惑だよね」と考えて何も言えなくなってしまっている部分があるのではないでしょうか。

 同時に、「迷惑をかけてはいけない」と思うあまり、私たちは、自分に頼ってくる人に対しても、少し厳しい目で見てしまうところがあるのかもしれません。つまり、私たちは「人に頼らない」だけでなく、「人に頼らせない」という習性をも、深く刷り込まれてしまっているのです。

 では、私たちはこれまで誰かに「人を頼る方法」や「どのくらい相手に甘えていいのかを判断する方法」については教えてもらったことがあったのでしょうか。実はインドのある地方では、親が子どもに「お前は人に迷惑をかけて生きているのだから、人のことも許してあげなさい」と教えるそうです。実際、人は誰かに迷惑をかけずには生きられません。誰かが育てた野菜を食べ、誰かが建てた家に住み、誰かが仕立てた服を着て、会社へ行きます。つまり、誰にも迷惑をかけず、頼らずに生きていくことは、そもそも不可能なのです。

誰もが、人に迷惑をかけながら生きている
誰もが、人に迷惑をかけながら生きている

 僕はこれまでの社会人生活の中で、「助けて」が言えないあまりにキャパオーバーになるまで一人で抱え込んでしまう人、あるいはその結果として精神や体調を壊してしまう人のケースを、少なからず見聞きしてきました。だからこそ、私たちは「人を頼ること」について、もっと真剣に学ぶべきだと思うのです。