ハワイで外れた「恥の意識」

 では、古い時代の刷り込みに対し、どうやって自覚的になっていけばいいのでしょうか? 分かりやすい例を挙げましょう。僕のある友人は先日、母親と一緒にハワイ島を旅したそうです。彼女の母親は「いい年してビーチなんて歩けない」と抵抗しながらも、娘に無理やり海に連れて行かれました。しかしそこで目にしたのは、同世代の女性たちが、自身の体形や年齢など気にもせず、ただ海で遊ぶことを心から楽しんでいる姿でした。

 するとその母親は、いかに自分が日本人の「恥」の意識にとらわれ、人生を謳歌することを忘れていたか一瞬で理解し、その場で泣いてしまったそうです。水着さえ持って行っていなかったのですが、「構わないわよね!」と笑ってTシャツと短パン姿で海へ入ったといいます。

 このように外見へのこだわりは、自身が置かれていた環境下での「刷り込み」に大きく影響されます。環境が変わることで、相対化できることも多いのです。

環境が変われば評価も変わる

 転職も、環境による刷り込みに対して自覚的になるいい機会になります。人気ネットショップ「北欧、暮らしの道具店」を運営する、クラシコム代表取締役の青木耕平さんは以前、「転職とはこれまでの自分に対して客観的になることである」と話していました。

 これはすごくいい言葉だと思います。僕も何度も転職を経験してきたからこそ感じることですが、会社とは、どんなに多様性に富んだ人材を揃えた場所であっても、一つの理念に向かう組織である以上、似たような考えに偏りやすい場所でもあります。転職をすることで、新しい会社の価値観の中で働くことができ、そのうちにこれまでの自分の働き方やアイデアを客観的に見られるようになるのだと思います。