知らぬ間に自分の中に取り込んでしまっている「外側からの評価軸」に気付くには、今いる環境から全く別の環境へ一時的にでも移ってしまうのが、手っ取り早い方法だと思うのです。

 僕は何も、皆さんにすぐにでも転職をすることを勧めているわけではありません。例えば、出張で地方へ行くのなら、ぜひ地元の居酒屋へ足を運んでみてはどうでしょう。これは僕もよく経験したことですが、都内では年相応にしか見られなかったとしても、地方に行って環境が変わった途端に、すごく若く見られる――つまり、自分を見る周囲の目がガラリと変わることはよくあるのです。いかに「評価」というものが、自分を取り巻く限られた環境下でのあやふやなものでしかないかということを、一瞬で体感できることと思います。

「自分だけの評価軸」を育てよう

 「外側の評価軸」に自覚的になれると、たとえ世間の評価が依然として変わらないままでも、そこから距離を取れるようになります。世間の目に対して、必要以上に敵対的になる必要はありません。自分の中で「自分だけの評価軸」を育てていく意識で、「これが好き」「嫌い」の判断を繰り返していくことが大切だと思います。

 外側の評価軸を「知識の一つ」としてとらえ、同時に自分だけの評価軸もしっかりと作り上げることができるようになると、やがてその2つの価値観が交差する場所に、斬新なアイデアが生まれていくでしょう。

 つまり、外側からの評価軸と自分だけの評価軸をコラボレーションさせていくことで、他者からの共感を集め、かつこれまでにない新しさも兼ね備えたアイデアが形作られていくのです。こうして、変化をうまく応用して「自分のもの」としていくことが、これからの時代を生きるコツなのかもしれません。

取材・文/小野田弥恵