年金制度や貯蓄…将来のことを考えると、お金にまつわる不安は少なからずありますよね。投資をしてみようかな?なんて思っている人も多いのではないでしょうか。今回は、「外貨投資は本当にもうかるのか」を行動経済学から考えます。

「知っていること」と「よく理解していること」は別物です

 最近は、外貨を持つことや外貨建ての金融商品がはやっています。以前、ある集まりで、30代の独身女性の方とお話しする機会がありました。その人はそれまで銀行預金一辺倒で、投資は一切やったことがないとのこと。

 そんな彼女が、「でも将来のことを考えて、少し投資を始めてみようかなと思っているのです」と言うので、「なるほど、それは良いことですね」と私が言うと、次に出てきた彼女の言葉に私は一瞬耳を疑いました。「はい、それでまずは手始めにFXでもやってみようかなと思っているのです」

 投資を全くやったことがないにもかかわらずなぜ、投機的なFXからやってみたいと思っているのか不思議に思って聞いてみると、「だって、株はよく分からないし。でもドルやユーロなら海外旅行でいつも使っていてなじみがありますから」という答えが。

 でもこれは大きな勘違いです。「知っていること」と「よく理解していること」は全く別物なのです。行動経済学ではこういう勘違いのことを「利用可能性ヒューリスティック」と言います。自分が知っているから詳しいと勘違いしてしまうのです。

 もし仮に「車の運転は興味もないし、よく分からない。けれど海外旅行にはよく行くし、飛行機は好きだから飛行機の操縦から習ってみようか」などという人は、まずいませんよね。でも「株は分からないけど、海外旅行に行くのでドルやユーロはなじみがあるからFXをやってみたい」と言う人はこれと全く同じことを言っているのです。

 私はFX取引自体が悪いとは思いませんが、それまで投資を全くやったことがない人が投資を始めるきっかけとしては適切なものだとはとても思えません。その理由は「FXに代表される為替取引は難しい」ものだからです。ではなぜ難しいのかということを、為替取引の本質から考えてみましょう。