経団連の指針では、3月に説明会などの採用広報解禁、6月には面接などの選考がスタートする2020年卒の就職活動。いよいよ本格化する就活を、学生たちはどう乗り越えていけばいいのでしょうか。採用や人事のプロである雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんに、就活との向き合い方や面接のコツなどを聞きました。

「いい企業」に合わせる必要はない

 これから就活を始める皆さんに、伝えたいことがあります。「こうすれば内定が取れる」というような眉唾物のテクニックを、うのみにしないでほしいのです。入りたい企業に自分を合わせ、上辺だけを取り繕うようなテクニックを身に付けても、意味がありません。就活は、演技力を競う場ではないからです。

 もし「どこでもいいから内定が欲しい」と思っているなら、少し立ち止まって考えてみてください。「こうしたら受かる」という話を実践して、合っていない企業に入った後のことを。自分と入社先のミスマッチが顕在化して、「こんなはずじゃなかった」と思い悩む自分の姿が想像できるはずです。

 そもそも就活は、受かっても落ちてもいい。自分に合っていない企業には落としてもらい、合っている企業から内定をもらうことが大切なのです。 「いい企業」ではなく、「自分に合っている企業」に入る。こうした根本的な発想の転換――パラダイムチェンジこそが、就活にはまず必要です。

「こうすれば内定が取れる」というような眉唾物のテクニックを、うのみにしないで
「こうすれば内定が取れる」というような眉唾物のテクニックを、うのみにしないで

面接では「素のキャラ」を出そう

 では、どうすれば「自分に合っている企業」を見つけられるのでしょうか。答えは、面接での受け答えにあります。面接で「自分の素のキャラ」をきちんと説明することができれば、おのずと企業側が、合う・合わないを判断してくれるはずです。

 だからまずは、大学時代に頑張ったことをもとにして、自分の素のキャラクターを説明できる事例をたくさん用意してください。思い切り何かに打ち込み、頑張ったことの中にこそ、「自分らしさ」が表れます。

 ただし、「サークルの副部長を頑張った」「留学をした」「自転車で日本1周旅行をした」といった、表面的な話だけで終わらせないようにしましょう。企業は、学生たちが成し遂げた偉業を知りたくて面接しているわけではありません。目の前で話している学生が、自分の会社に合うか合わないかを見極めるために面接をしています。

 伝えなければならないのは、あなたのキャラが分かる独自のエピソードです。もしもあなたが自転車で日本1周旅行をしたのなら、その時に起こったトラブルを、どう解決したのかというエピソードを具体的に伝えてください。例えば、「山道で迷ってタイヤがパンクした時に、私は〇〇と考えて、〇〇という方法で解決しました」というように。そうすれば、自分の考え方や問題解決法を、明確に相手へ伝えることができます。

短所から自分らしさを探る方法も

 反対に、「学生時代に頑張ったことがない」「自分らしい話が思い浮かばない」というのなら、自分の短所や苦手なことを考えてみましょう。なぜなら短所と長所は、表裏一体。「自分らしさ」というものは、苦手なことの中にもよく表れているものだからです。

 例えば「気が小さくて心配性の人」は、見方を変えれば「準備を万全にする用意周到な人」であったりします。自分の長所が分からないという人は、まずは短所を挙げ、それを長所として捉え直してみましょう。あるいは、短所が長所として生きたエピソードが過去になかったか、思い出してみてください。

 そしてこれまでに、短所や苦手なことを克服した経験があるのなら、どのように努力し、改善したのかを話すようにしましょう。