大きな自分を「演じる」必要はない

 企業が求めているのは、完璧な人間ではありません。「仕事をきちんとこなし、仲間とうまくやっていける人」を採用したいと考えています。

 多少粗くてもスピードが優先される仕事が中心の企業では、細かく丁寧に物事に取り組む人は採用されにくいです。もちろん、その逆もあります。同様に、考えるよりも行動することを重視する企業に、じっくりと考えてから行動に移す思考型の人材は合いません。その逆もしかりです。

 つまり、仕事は企業によって千差万別。この当たり前のことに気付けば、面接で自分を大きく見せたり、演じたりする必要がないことが分かるはずです。あなたが、これまでに何をどう頑張ってきたのか。企業側は、そういう真実が聞きたいと思っているのです。

 だから、不採用になったとしても、あなた自身がダメなわけではありません。「自分らしさ」を生かせない企業なら、落ちて本望。「自分には合っていなかったんだ。落としてくれてよかった」という気持ちで挑みましょう。

「自分らしさ」を生かせない企業なら、落ちて本望。あなた自身が悪いわけではない
「自分らしさ」を生かせない企業なら、落ちて本望。あなた自身が悪いわけではない

面接は5回で慣れて、10回で一人前

 最後に。面接について、もう一つ伝えておきたいことがあります。面接は、1回ではうまくいきません。2、3回目も、緊張してまともに受け答えができないはずです。だいたい5社くらい経験すると、ようやく緊張が取れて話ができるようになります。だからまずは5回を目標にして、面接に慣れるようにしてください。

 そして面接が終わったら、その都度きちんと反省しましょう。自分の話は、相手に伝わったのか。面接官の反応がよくなかったなら、どうしてだったのか。どう改善すれば伝わるようになるのか。面接を振り返って、1回終わるごとに悩んでください。

 そうして回数を重ねていき、10回面接を繰り返した頃には、「こういう話だと相手も真剣に聞いてくれる」「逆にこの話には反応が返ってこない」と、企業が興味を持つ点が分かってくるはずです。企業の質問は、たいていは似てくるので、面接を繰り返して受け答えの要領をつかめば、採用側の視点に近づくことができます。

 一方、面接官に自分から「確認質問」をすることも有効です。例えば、「私のような性格で、役職に就いている方はいらっしゃいますか」「私の話を聞いて、どんな感想を持たれましたか」など。自分の話が相手に伝わっているのかを確認しつつ、質問をすることで、会話のキャッチボールが生まれます。

 会話のキャッチボールができれば、相手も自分もホッとして、その場の空気が変わります。この「確認質問」は、面接を重ねていく中でぜひ使ってみてください。

 次回は、職種選びやインターンシップ選びのポイントなどをお話しします。

取材・文/青野梢 写真/PIXTA

海老原嗣生
雇用ジャーナリスト
海老原嗣生 大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートキャリア)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の著書多数。近著は「『AIで仕事がなくなる論』のウソ」(イースト・プレス)。