AI技術の進展は、これから就職活動をする学生たちにとっても他人事ではありません。AI化が進むにつれ、働き方にはどのような変化が起こるのでしょうか。採用や人事のプロである雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんに、将来を見据えた職種選びや、入社後の仕事をより具体的にイメージするためのインターンシップ活用法を聞きました。

海老原嗣生さんに聞く/前編
たとえ落ちてもいい 就活のパラダイムチェンジを

AI化が進むと、どうなる?

 前回は、就活における「パラダイムチェンジ」の必要性をお話ししました。

 就活では、自分を大きく見せる必要も、演じる必要もありません。そもそも就活は、受かっても落ちてもいいのです。「内定をもらうこと」が目的となり、自分を偽って入社しても、いずれ自分と企業のミスマッチが顕在化し、悩む時がやってきます。だから「いい企業」ではなく、「自分に合っている企業」に入る。この「パラダイムチェンジ」をしっかりとして、面接では「自分らしさ」を伝えることが大切だ、と。

 今回は、まずAIの進化に伴う「仕事」の変化についてお伝えしたいと思います。

 AI化が進むと、いずれ「事務職」はなくなるでしょう。なぜならAIは、複雑で難しいルールを学習し、人間よりも早く正確に事務処理をするからです。そのため、まずは請求処理といった簡単な事務業務がなくなり、やがて給与計算や保険計算といった業務もなくなるでしょう。つまり、コンピューターの中だけで完結する「知的な処理業務」は、いずれAIによって淘汰される時代がやってくるのです。

 しかし、駆け引きや交渉が必要な「対人折衝業務」や、モノを動かしたり、複数の細かなタスクを並行したりする「物理的業務」は、そう簡単にはなくならない。つまり、対人折衝業務を行う「営業職」や、物理的業務を行う「店員・販売員・作業員」といった職業は、AI化が進んでも残るのです。

コンピューターの中だけで完結する業務は、AIによって淘汰される時代がやってくる
コンピューターの中だけで完結する業務は、AIによって淘汰される時代がやってくる

「○○が嫌だから」という仕事の選び方はNG

 だからもし、「営業が嫌だから事務職に就こう」と思っているなら、その考え方は変えたほうがいいと思います。「○○が嫌だから」という「逃げ込みキャリア」で事務職を選んでも、AI化に適応できず淘汰されてしまうからです。

 また、「資格を取れば安心」という考え方も危険です。たとえ資格を取って税理士になったとしても、対人折衝業務を避ける人は、数字を打ち込んで書類を作るだけの税理士になるからです。

 そうなると、いずれはAIに取って代わられる日が来るでしょうし、年収が上がる可能性も低い。反対に、資格を生かして営業やコンサルティングもできる人材になれば、AIには代替不可能な税理士となり、キャリアを重ねるごとに年収もアップする可能性が高いといえます。

自分に合う企業に入れば、夢は見つかる

 将来を考えるときに「○○になりたい」と答える人がいますが、それだけでは足りません。「○○になって何がしたいのか」ということにまで、考えを巡らせることが大切です。

 「弁護士になりたい」のならば、具体的にどんな仕事に携わりたいのか。一口に弁護士といっても、専門分野はさまざまです。仕事内容や給料にも大きな違いが出てきます。

 自分にとって「やりがいのある仕事」とは何なのか。何をすれば、「やりがいがある」と感じられるのか。「大きな仕事がしたい」と思うのであれば、そこでイメージしている「大きな仕事」とは、具体的にどんなものなのか。こうしたことについて、考え抜くことが大切です。

 ただ、働いていない状態では、やりたいことを明確にできないという人もいるでしょう。そうした場合には、今、無理に見つける必要はないと思います。

 自分の個性や能力に「合っている企業」に入れば、やりたいことはそこで見つかるはずです。夢は、見つけるものではなく、見つかるもの。だから就活生が何よりも優先させなければいけないのは、「自分に合っている企業」に入ることなのです。