経団連のルール下では3月に説明会が解禁されたばかりですが、水面下での早期化も伝えられている2020年卒の就職活動。就活生の皆さん、状況はいかがですか。書類選考や面接で、採用する企業側が何を考えているのか、気になることも多いですよね。そこで日経doors編集部では、製造、人材、PR業界の採用担当者に、覆面インタビューに応じてもらいました。語り尽くされたホンネを、3回にわたりお伝えします!

座談会で聞きました
座談会で聞きました

ビジネスのトレンド、早期離職…企業もつらいよ

――採用をする上で課題に感じていること、求める人材像は。

製造 当社は家電メーカーです。採用課題としては、IT系のビジネスに勢いがある中で、いかにハード系のメーカーに魅力を感じてもらえるか。製造に携わるエンジニアも専門職として募集しているのですが、学生の間では断然、IT系エンジニアのほうが人気なので、悩みどころですね……。これは業界全体に共通する課題です。

 何といっても「ものづくり」に対する思いが強い学生に来てほしいです。特定分野へのこだわりが強い人材と一緒に働きたいと思っています。

人材 人材業界は市況に左右されやすい業界です。現在は比較的好景気なので、業界に参入する企業も増えていて、コモディティー化――つまりどこが何に取り組んでいても、同じような印象を受けやすい状況にあると思います。一方で景気が落ち込んでくると、企業の採用が一気に収束していくので、各社の激しい生き残り競争が始まる。

 「働く」ということを通じて多くの人の人生を支える仕事はやりがいがありますが、そこに携わる社員自身も、働くことに対して積極的でなければ続けていきにくい。そんな厳しさもある業界だと思っています。

PR 当社での仕事は、「企業」がお客様。さまざまなプロモーションを支援するPR・広告代理店です。学生の生活になじみが深いB to Cの企業に比べると、仕事内容を理解してもらうのがまず難しいという課題はあります。また、当社は歴史がそれほど長い企業ではないので、ベンチャー企業に近い気風を持っています。

 近年、新卒でベンチャーに入るということへの障壁は下がっていると思います。一方で、「かっこいい」だけじゃない。実力主義で、タフであることを求められます。そのせいか、意気込んで入社してくれるわりにはすぐに辞めてしまう新人も多く……。ある程度踏ん張ってもらえる人材を採りたい、というのが本音です。

就職後1年で「違ったんで辞めます」

――すぐに辞めてしまう背景には何があるでしょうか。

PR 「実際やってみたら、イメージと違った」。少し前の世代では「3年積み重ねたら見えてくるものもある」というロジックがありましたが、今は通用しないようですね。他社も、第2新卒での採用もウエルカム、という雰囲気にどんどんなっていますし。1年などの短期間で辞めることが、ネガティブではなくなっている印象です。

製造 「やってみたら違った」、ありますね。転職にスイッチすることに後ろめたさがない。マーケットも売り手市場だから、会社としても常に魅力ある環境、面白い仕事をつくり出していかないと、すぐに「見切り」をつけられてしまうという危機感があります。

 うちはいわゆる「老舗」で、長く働き続けている社員も多いので「なんでそんなに辞めちゃう?」という戸惑いはありますよ(笑)。ただ、ある程度の人材の流動性によって組織が活性化する部分もあるし、善しあしですね。若い世代の価値観が変わってきているのは確かだと思います。

人材 1年以内に退職する人は、一定数いますね。新卒採用の場合は、目下「そういうことが起きないように」ということで、入社前から社内研修をするなどして実際の仕事に触れてもらい、ミスマッチが起きないように工夫しています。

PR 当社は新人にも早い時期から仕事を任せるんですよね。任せただけなんですけど、「やり遂げた」という気持ちになって転職してしまうケースも。本当はいろいろな人のバックアップがあって「何とかうまくいった」という状態なのですが、「ここではある程度勉強できたんで」などと言われることもあります。いや、何十年間も勤め上げてください、と言いたいわけではないんですけどね……。

――たくましいような、先が心配なような……。