「盛った」エピソードはむしろ不利に

――それでは、面接については何を重視していますか。

人材 会って話して、その人の価値観を知りたいと思っているので、NGかどうかよりも「合うか、合わないか」を考えるという表現のほうがしっくりきます。

製造 人材業界の企業って、面接回数が多い傾向にあるって聞きますけど。

人材 当社の場合は、時間が比較的長いです。20~30分の面接と違い、学生側としては準備してきたことを話せる箇所と、そうでない箇所が出てくると思いますね。幼少期から現在に至るまでの成長や変化、家族関係や友人関係も聞く中で「ココがこの人の本質なのかな」「当社との相性はどうかな」ということを一緒に考えていきます。

――「合う、合わない」はどう見極めますか。直感やフィーリングですか?

人材 「事実ベース」で判断するよう意識はしています。具体的に言えば、当社は仕事をする上で、「成長しようとすることは当たり前」という風土があります。自己研さんに積極的な人が多い会社に、例えば「大切なのはプライベートだけ」という感覚の人が入ったら、たぶん本人が苦しい。

 だから、「どういうバランスで、何を大事にして生きてきたのか」を見るんです。学生時代にどんな部活をしていたのか、それとも帰宅部だったのか。帰宅部がダメという意味ではなくて、では放課後の時間に何をしていたのか。「ただボーッとしていた」という答えだと、「入社してから求められることがしんどく感じるのではないか」という疑問が生まれます。さらに質問を重ねていく中で、「違う企業を選んでもらったほうが幸せかな」という結論になるケースもあるわけです。

PR 経験は当社も深掘りしていくので、「盛ってるな」って分かってしまうとちょっと。就活の時期になると、みんな「サークルの副代表をしていました」とか言い始める話、あるじゃないですか。でも挙げた成果を具体的に聞いていくと、正直、大したことやっていなかったり。「小さいことでもこんなふうに工夫した」、あるいは「本当はこうしたかったという反省があるから学びに変えています」と伝えてもらったほうが誠実で好感が持てます。内容より「盛った」という事実が信頼関係に影響してしまうんですよね。

製造 その通りですね。入社後はどのポジションでも「会社の顔」として外部の方と接してもらうわけだから、信頼関係が築けるというのは大事なポイントになります。知識や経験は入ってから身に付ければいいのですが、話す上での姿勢の部分は、これまでの人生の中で時間をかけて形づくられてきたものだから。

 あとは、緊張の影響もあるのだと思うけれど、ESと同じでこちらが「質問していないこと」をどんどんしゃべり始めてしまう学生は結構いますね。ESに「コミュニケーション能力が強み」と書いてあっても、それは面接で試されてしまうので。採用する側もスーパーマンを求めているわけではないから、落ち着いて、基本的なコミュニケーションをしっかりと取っていく意識を持つといいんじゃないかな。

PR 質問が終わる前に「かぶせ気味」で回答する人とかいませんか(笑)。「○○についてどうでs……」くらいのところで「私は!」みたいな感じで。慌ててそうなってしまうときはあると思うんですよ。ただ、こちらの表情が少し曇ったことに気付いて、軌道修正していけるか。そういうやり取りが自然にできるかどうかは、仕事の適性に大きく関わってくるので気にしています。

採用の判断基準は「NGかどうか」よりも「合うか、合わないか」
採用の判断基準は「NGかどうか」よりも「合うか、合わないか」

 学生側は自分を大きく見せようとしがちですが、企業側は「価値観」や「信頼感」を重視している様子。書き上げたESを前に「ちょっと盛ったかな……」と感じてしまったら、もう一度素直に自分と向き合ってみるのがよさそうです。次回も引き続き、座談会の様子をリポートします!

構成/加藤藍子(日経doors編集部) イラスト/PIXTA