「拡張家族」との共同生活で「当たり前」を壊す

 森原さんがシェアハウスに住み始めたのは2017年9月。前職時代、「拡張家族(※)」をコンセプトにした新しい共同コミュニティ「Cift」(シフト)を立ち上げた藤代健介さんと出会い、会社のプロジェクトの一環で、クリエーターたちとCiftに一緒に住みながら新しいプロダクトのアイデアを生み出すというミッションに挑戦したのがきっかけ。(※拡張家族とは、一つの空間で共同生活をするコミュニティのこと。血のつながりはなくとも助け合い共に生きる、次世代の家族ともいわれる)

 最初に住んだのは「渋谷キャスト(SHIBUYA CAST.)」。13階にある19部屋全てを借り切って、血縁も地縁もない40人が一緒に住み、共に暮らし、共に働く中で新しい価値を創り出していくというものだ。

 「現代版の長屋みたいなイメージです。朝起きて、誰かが朝食を作っていれば一緒に食べたり。帰宅すると、共有のリビングスペースで環境をテーマにしたイベントが開催されていることもあります。皆でテーマを考えて時間をつくって対話をすることも重視しています。生き方・暮らし方の実験という感じで、とても面白い暮らしです」

松濤のキッチン。「料理人のメンバーが皆に料理を作ってくれることも」
松濤のキッチン。「料理人のメンバーが皆に料理を作ってくれることも」

 渋谷キャストで半年の実験生活を過ごした後は、同じCiftのメンバーで借りることになった松濤の一軒家に部屋を移すことにした。森原さんは「拡張家族」と住むことによる変化をこう話す。

 「自分の常識が壊されていくんです。それまで大事にしてきた価値観に対して『これってそんなに大事? もしかして、こっちのほうが大事なんじゃない?』という問いを突き付けられる。Ciftには、対話を大事にする文化があって、他の人の言葉を柔軟に受け入れたり、開いた心で自分の考えを共有できたりするので、既存概念に固執しなくなる。自分にとっての当たり前をどれだけ壊すことができるかが、私にとってこれからもテーマであり続けるんじゃないかな」