六本木で働きながら「今夜は酒々井で温泉に入ろう」
2018年5月からは現在の2拠点生活を開始した。
2回目の取材は酒々井にて。JR南酒々井駅から徒歩10分の場所に、堂々とした古民家が私たちを待っていた。日当たりのいい縁側もある、「ザ・日本家屋」。築40年という歴史と、住民のセンスのよさがあいまって何とも居心地のいい空間が広がる。そばには広い畑もある。
「ご近所さんに引っ越しの挨拶をした時に『畑、貸してあげるよ』って言われて」
1年目は落花生、ナス、トマト、モロヘイヤなどを育て、都心の友達を招いて畑仕事を共にし、収穫祭も開いた。
「会社まで2時間というと遠い印象もありますが、本を読んだりスマホを見たりしていると意外とあっという間。東京のど真ん中・六本木の会社で『今日は酒々井に帰って温泉に入ろう』と思うと、帰るのも楽しみになります。家の近所の森や畑を歩くだけでリフレッシュでき、頭のOSが切り替わる感じ。最近は平日もできるだけ酒々井に帰るようにしているんです」
28歳でニューヨークへ
仕事面でも刺激に満ちている。
新卒で日系の総合電機メーカーに入社後、2年間は法人営業を担当。その後、グローバル向けのマーケティングコミュニケーションの仕事を4年経験して新規事業チームに移り、ブランディングや商品企画など仕事を手掛けた。
28歳の時、新商品を北米に導入する目的で、単身ニューヨークに派遣されたことも。土地勘もない海外で、自分の住まい探しからオフィス探し、ビジネスパートナーとの提携、PRイベント企画まで、ゼロから任されることを通じ、思い付いたことはなんでもやってみよう! という仕事の仕方や、自ら市場に出ていって肌感覚を持ってプランニングをすること、やろうと思えば「なんとかなる」というたくましさを身に付けた。
今度は、新しいチャレンジとして、外資系IT企業へ。
「私がCiftに入った時、メンバー約40人のうち会社員はたった2~3人、会社勤めをしている人がマイノリティーだったんです。周りは自分の夢や専門性を突き詰めて生きているフリーランスや経営者ばかり。そんな人たちの姿を見てインスパイアされたし、企業の看板があってもなくても、自分は本当に何をしたいのか、何ができるのかを考えるようになりました」
森原さんの生き方を見ていると、あらゆる「枠」にとことん挑戦する姿の潔さを感じる。家族、家、キャリア……。「これってこういうものだったよね」という概念を打ち壊し、新しいモノを見よう、感じよう、創ろうとする姿勢。森原さんの行く先には、私たちが見たことのない情景が広がっていく。
取材・文/小田舞子(日経doors編集部) 写真/稲垣純也