覚悟がなければ複業はやらないほうがいい
笑下村塾の代表を務める相川さんは、現在リクルートに勤務。たかまつさんも就職し、芸人としてライブも精力的に行う日々。二人とも、「複業は、そのどちらにもメリットをもたらしてくれるもの」と語ります。
「笑下村塾では出張授業の際に、小学生から高齢者まで幅広い世代の人と触れ合える機会があるので、さまざまな感覚をつかむことができます。(笑下村塾で)教育のコンテンツを作るときも、(リクルートで)メディア制作するときも、広い視点で社会を見る目が養えていると思います」(相川さん)
一方で、どちらにも責任を持つ複業は、身を粉にして働くような「覚悟が必要」だと口をそろえる二人。笑下村塾でも推奨しているという複業。ただその「ふくぎょう」の「ふく」の字は、あえて(サブのほうの)「副」にしているんだとか。
「世の中『複業』『パラレルキャリア』と色めきだっているけれど、メインの仕事があって休日に働く『副業』のほうが絶対にワーク・ライフ・バランスは取れます! 私は全部本業だと意気込んでいるけれど、それだとプライベートはほぼゼロ(笑) お勧めはできないかもしれません」(たかまつさん)
大事なのは働き方の「手段」よりも「ゴール設定」
doors世代である20〜30代には、「複業」よりも「プロボノ(スキルや経験を活用して社会貢献するボランティア活動)をお勧めしたい」とたかまつさんは言います。
「例えば、『何のために働いているんだろう?』と思うくらい平日くたくたになっているSEさんが、土日にボランティアでNPOのHPを作ったらとても喜ばれて、月曜から自分の仕事に誇りをもって頑張ろうと思える……。そんなハッピーな循環が理想だと思うんです」(たかまつさん)
働き方に関していろんな意見が飛び交う今、「『副業』や『リモートワーク』といった『働き方の手段』を選んでいる人が多い印象」と語る相川さん。
「本当に大切なのは、自分がどうなりたいか、どう生きたいか、何を達成したいか、のゴール設定ではないでしょうか。私たちは『社会を変えたい』が目標。そのために、スキルを身に付けつつ実践の場を得られる環境を重視した結果、自然と『複業』という働き方になったんです。私たちと同じdoors世代の皆さんにも、ぜひゴールの設定をしてほしいなと思いますね」(相川さん)
笑いもあり、なるほどとうなずくこともたくさんあり、楽しく話が進んだ今回の取材。和やかに話しながらも、目の奥には静かに燃える熱い覚悟が見えるお二人でした。
取材・文/尾崎悠子(日経doors編集部) 写真/稲垣純也
笑下村塾
芸人として活躍する傍ら、お笑いジャーナリストとして社会問題について発信。笑下村塾では、主権者教育やSDGsの普及・啓発も積極的に行い、教育・進路講演会をはじめ企業のビジネス研修講師としても活躍中。
左:相川美菜子さん
学生時代に個人プロジェクトとしてウェブサイト「政治美人」の立ち上げを経験後、現在はリクルートでメディア制作を担当。2018年8月から笑下村塾の代表取締役に就任。