開始2日間で署名12万以上の反響

―― 今回の署名活動では、開始から2日間で約12万6000人もの署名が集まりました。賛同人として、音楽家の坂本龍一氏、水原希子氏、漫画家のひうらさとる氏、日本文学研究者のロバート・キャンベル氏など、各界の著名人が名を連ねています。

福田 こんなに早く、こんなにたくさんの署名が集まるとは当初思っていなくて。今回これだけ多くの方が、怒りを表明しています。それは、森会長の発言や態度が、数少ない、これまでに見たこともないような性差別主義者だったからではなく、彼の発言や態度をみんなが日々目にして、それによって苦しい思いをしたり、能力はあるのに排除されたりという積み重ねがあったからこそ。しかも、メディアがいるにもかかわらず、公の場であらわになりました。このこと自体が、性差別が日本社会全体にはびこっていることの表れなんじゃないかと思っていて、署名活動は「社会は変わってきている」という表明でもあります。

このアクションは希望でもある

福田 だから、この署名活動には希望があるんです。次の世代には今回のようなことを見てすらほしくないし、こんなことは自分たちの世代で終わらせて、10年後は同じことが起こらないようにしてほしい。本人たちが気づいてさえもいない差別意識の積み重ねによって、どれだけの女の子たちの翼が折られてきたか。それに対して、今回みんなで一緒にアクションを起こせたのはうれしいですし、「撤回します。頑張ります。これで終わり」という同じことの繰り返しは何とかここで止めて、性別関係なく、能力を生かせるという社会を次の世代につなげていきたいと思っています。

―― 森氏の辞任意向の報道がありました。今の思いを聞かせてください。

福田 ジェンダー平等が世界的に重要視される中、性差別発言をした方が会長職を降りるのは当然のことだと思います。一方で、この性差別発言を笑って受け流したり、ジェンダー平等推進に後ろ向きな発言をしたりしてきた周囲の方々がいることも事実であり、そこも大きな問題です。ジェンダー平等を含め、理念を大切にするオリンピックを実現するには、トップを変えるだけでなく、構造的な変化が必要だと思う。だからこそ、次トップになる方には、二度とこういったことが起こらないよう、本署名でも求めている「差別発言に対するゼロトレランスポリシー(一切寛容しないことを示す)」の採用といった再発防止策の実施や、女性理事の割合の引き上げなど、あらゆる差別を容認しないための具体的な対策を明示してほしいです。

 ただ、既に一点懸念しているのが、この数日間、多くの方たちが「会議が決定事項を承認するだけの場になっていて、実際の議論が仕事後の『会食』で決まること」を問題視していました。議論を行う「会食」に関われない多くの人がいます。特に日本ではいまだに多くの家事を担わされている女性が重要な意思決定の場にいられず、結果的に活躍できない不当な状況にあります。今回の次期会長の選び方はまさにこれまでのやり方が踏襲されていて、本当に問題の本質を理解しているのか、疑問が残ります。ジェンダーに基づく差別は、今こそ断ち切るべき日本社会全体の問題です。だからこそ私たちは引き続き、署名の提出をはじめ、声を上げ続けたいと思います。