誰もが声を出せるわけじゃない

―― 諦めにも似た境地で沈黙や違和感を見過ごし続けていた風潮があった中、今回の署名活動を含めた日本社会の多くのアクションは、誰かが動くことで周りも変わり、自分自身も意識を変えることができるというメッセージにもなりました。最後に、同世代の日経doors読者にメッセージをお願いします。

福田 日本のジェンダー平等の取り組みは遅れていますが、社会全体としては変わりつつあることを実感しています。とはいえ実際に今は、マイノリティーとして男性社会の中でその場では発言しづらい雰囲気などがあり、女性の活躍には多くの壁があり、わきまえなかった場合には排除されてしまうという方は少なくありません。一緒に怒れる人もいれば、現状目の前で声を出すことさえつらい人もいると思います。

 そういう方には、声を出せない自分を責めないでほしいです。今回の署名活動で、同世代の女性だけでなく、これまで女性の社会進出の道を切り開いてきてくれた先輩方、現状に違和感や危機感を持つ男性などいろいろな人が「発言はおかしい」と言葉にしていますが、今苦しい思いをしている人にとっての力、励みにもなればという思いでアクションを起こしている人は少なくないと思います。「できる人が、できるときに、できる範囲で」も大事。いずれにしても、この署名が、私たちは一人ではないし、「今」を、「未来」を変えようって世の中が動き始めていることを可視化する手段の1つになったらうれしいです。

福田和子
「#なんでないのプロジェクト」代表
福田和子 国際基督教大学入学後、日本の性産業の歴史や公共政策を学ぶ。その後、スウェーデンに1年間留学。日本における、女性の人生の選択肢を狭める限られた避妊法や性教育の不足を痛感し、2018年5月、『#なんでないのプロジェクト』をスタート。2019年8月から再びスウェーデンに留学し、ヨーテボリ大学大学院で公衆衛生を学ぶ。世界性の健康学会(WAS)Youth Initiative Committee委員 /国際NGO JOICFP I LADY.ACTIVIST /性の健康医学財団 機関誌『性の健康』編集委員。2020年、国際的にジェンダー平等を目指すSheDecidesムーブメント、Women Deliverより世界のSRHRヤングリーダーに選出される。

取材・文/加藤京子(日経doors編集部) 写真/本人提供