東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏による女性蔑視発言に、国内外から批判が殺到。辞任の方向で調整に入ったことが報道で伝えられている(2021年2月11日時点)。現在、森氏の処遇の検討や再発防止などを求める署名活動が行われており、大きな広がりを見せている。この署名活動は、ジェンダー平等の推進に取り組む20代の女性3人が中心となりインターネット上で行われたもの。発起人の一人であり、「#なんでないのプロジェクト」代表・福田和子さんに署名活動を立ち上げた経緯とジェンダー平等への思いを聞いた。

 森氏による女性蔑視発言は2月3日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会での「女性がたくさんいる会議は時間がかかる」「組織委の女性はみんなわきまえている」というもの。その翌日に謝罪会見を行ったが、逆ギレを交えた森氏の謝罪は形ばかりの印象を残し、根本に性差別の概念が日本に根強く残っていることを浮き彫りにした。署名活動が始まったのは、森氏が謝罪会見を開いた4日の夜。署名サイト「change.org」で森会長の処遇の検討や再発防止などを求める署名活動が開始され、2月11日正午までに14万5000人を超える署名が集まっている。

日経doors編集部(以下、――) 福田さんは現在、スウェーデンで公衆衛生について学ぶ大学院生で、「女性の選択」を尊重しない日本の避妊方法の選択肢や性教育の不足に対する問題提起から、世界の避妊法についても情報発信しています。今回のスピーディーな署名活動立ち上げの経緯を教えてください。

スウェーデン在住の大学院生で、性に関する女性視点の環境改善に向けて情報を発信し、ジェンダー平等に取り組む福田和子さん
スウェーデン在住の大学院生で、性に関する女性視点の環境改善に向けて情報を発信し、ジェンダー平等に取り組む福田和子さん

福田和子さん(以下、福田) 私がショックを受けたのは、森会長が公の場、しかもメディアの前でこれらの女性蔑視発言をしたにもかかわらず、出席者たちが笑って容認していたこと。個人の問題では済まされない根深い問題を感じて自分の中でもんもんとしていました。SNS を見ると、他の人たちも私と同じように怒っていたり悔しがったりしている。やり場のない思いを一人ではどうしようもできず、誰かと共有したいと初めて開いた音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」のルームが署名活動につながるきっかけです。

 時間は既に日本時間で3日午後11時を回っていましたが、Twitter上で「森会長の発言について一緒に話しましょう」と発信し、その5分後に開いたルームには常時100人前後の人たちが参加してくれた。ほとんどの人がお互い初対面にもかかわらず、リレートークのように次々に挙手してそれぞれが抱える思いを話し、熱気に包まれたまま午前2時過ぎまで続いたんです。私も含めた一人ひとりの思いの強さと怒りの深さを感じました。

森氏の発言に対する思いを一人で抱えきれず、クラブハウスで共有する場をつくった
森氏の発言に対する思いを一人で抱えきれず、クラブハウスで共有する場をつくった

―― クラブハウスには、どのような人たちが集まったのでしょうか?

福田 参加してくださった方は幅広い年代で、男性もたくさんいました。40代、50代の男性も「どうしたらこの問題に向き合えるのか」と真剣に話していらっしゃって。年齢や性別の問題ではなく、その個人がアップデートできているか、できていないかが重要だと感じました。