愛しているパートナーの荷物をより多く持ってあげよう

「『女性だけが生きづらい世界』は存在しないと考えています」
「『女性だけが生きづらい世界』は存在しないと考えています」

 そう語る山戸さんは「男性と女性の共生」について、どのようなイメージを持っているのか。「この話題を語るのであれば、絶対に触れなければならない、とても大きなテーマですね」と語る。

 「『女性だけが生きづらい世界』は存在しないと考えています。女性が生きづらいということは、男性にも同じ分だけの負荷がかかっているに違いないのです。だからこそ、ジェンダーの問題を考えることを通して、『パートナーの荷物をより多く持ってあげられる』ことにも繋がるはずです。一番愛している人の荷物を持ってあげられる可能性があることに、希望を感じます」

 働いていると、つい周囲に対する優しさや思いやりに蓋をして、「男性みたいに強くならなければ、一人前に働けない」と、がむしゃらに仕事に没頭する女性も少なくないのではないだろうか。そう問いかけると、「そうですよね。でも、そういうふうに戦われた方だからこそ、自分自身の内面を殺す苦しみを、誰よりも強く知っているはずです」と答えてくれた。

 「その戦いが無駄だったわけではなく、向かい合った末の内面を、同じ世代、そして次の世代と分かち合っていくことで、その時に感じた絶望を希望に変えてゆくことができる。そういうコミュニケーションの在り方もまた必要とされています。社会の中で、世代ごとに女性が分断されてしまうのは、避けられる、生きている地獄だと思うのです。上の世代からのメッセージに耳を澄まし、次の世代により広く伝えてゆくことに、あまりにも希望があると思います」

取材/小田舞子(日経doors編集部) 文/流石香織 写真/稲垣純也