身近な人の病気を機に、臨床心理士の道に進んだみたらし加奈さん。メンタルケアに対する偏見や敷居の高さをなくし、もっと身近な存在にするためにSNSを中心とした発信を続けています。臨床心理士の現場で感じた危機感からSNSで発信することを決めた原点、黒子的役割の慣習を打ち破る理由について話を聞きました。

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日経doors編集部(以下、――) みたらしさんは、臨床心理士であると同時に、Twitterフォロワー3万人、インスタフォロワーは1.8万人のインフルエンサーでもあります。現在のスタイルで活動するようになったきっかけを教えてください。

みたらし加奈さん(以下、みたらし) ある日、渋谷の街中で、統合失調症(※)の方と話す機会がありました。10代で初めて発症し、今は慢性期だと語ってくれたその女性に私の職種を話し、家族のことやかかりつけ医、精神障害者に関する法律や労働環境、自立支援などを聞く中で、彼女が抱える葛藤や孤独感、怒りの感情といったいろいろなことをお互いに本音で話したんです。「誰がいつどうなるか分からない。私だって明日、統合失調症になるかもしれない」と、そのときに感じたことや考えたことをインスタグラムで発信したところ大きな反響がありました。自分自身のことをインフルエンサーとして感じたことはないのですが、それをきっかけに「私の文章はもしかしたら誰かに届けられるのかもしれない」という希望もあって、臨床心理士としての発信をSNS上で始めました。

(※)幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患。100~120人に1人がかかる身近な病気で、10歳代後半~20歳代の思春期に発症しやすいといわれている
臨床心理士のみたらし加奈さん
臨床心理士のみたらし加奈さん