厳しい指導だったが、「私に『芽衣は大丈夫だよ』と毎日言ってくれました。私は頑固だったんです。でもこの人のためなら、自分を変えよう。そう思えました」。苦手意識は消えていき、売り上げが上がり始めた。2年目の後半以降、会社内で表彰されるMVP賞を、何度も取れるまでに成長した自分がいた。

 だが金井さんは、成果を出していたにもかかわらず、4年間でリクルートキャリアを辞め、独立した。27歳の時だった。

「金井芽衣」として生きたい

 「リクルートの看板は重かったですね。問題が起これば、私だけではなく、上司、そのまた上司、さらには親会社まで迷惑を掛ける。その看板を外して、『金井芽衣』になりたいと思ったんです

「女子力って、人からよく見られたいといった承認欲求で、外からのベクトルかなと感じています。そうではなくて、自分を満たすことが大切なのではないでしょうか」
「女子力って、人からよく見られたいといった承認欲求で、外からのベクトルかなと感じています。そうではなくて、自分を満たすことが大切なのではないでしょうか」

 ツイッターには1万7000人ほどのフォロワーがいて、時には発言したことに対して「クズ!」などと罵倒されるが、意に介さない。「2割には好かれ、2割には嫌われ、残りの6割はどちらでもないという話があります。何をしても、自分を好かない人はいる。自分らしさを発揮するということは、誰に何を言われても別にかまわない、と思う状態ではないでしょうか」

 そうだんドットミーは現在、100人弱のキャリアアドバイザーが相談者の悩みや課題に対応している。今年春、Web経由で、好みのアドバイザーが選べるようになる予定だ。金井さん自身も、プロのキャリアコンサルタントとして数百人の相談に乗ってきた。

 30歳前後の女性で圧倒的に多い相談は、「自信がない」ことだ。特にこの世代は、結婚や出産、キャリアの選択などの変化が短期間に現れ、SNSなどで「常に互いが見え過ぎる」と金井さんは分析する。故に人と比較して、羨ましいと感じたり、自分は活躍していないなどと萎縮したりしてしまう。

 金井さんは「仕事、恋愛、人間関係……。失敗やけんかを含め、経験にこそ価値があります。その一つひとつを褒めてほしい」とdoors世代を励ます。

 そうだんドットミーで目指しているのは、相談者のキャリアに対する理想と現実のギャップを解消すること。金井さんは、相談者の経験をひもときながら、長所を一緒に探すようなコンサルティングを心掛けている。そう、金井さんが恩人から受けたような、愛と期待を込めて。

 「あなたはあなたの良さがあるんだよ、人と比べなくて大丈夫」

取材・文/中川真希子(日経doors編集部) 写真/花井智子