「最速でCEOの座から離れる」ことが目標

 流郷さんにとって、仕事を引き受けるかどうかは、「自分の子どもが80歳になったときでも、その事業が多くの人の役に立っているかどうか」が判断基準なのだという。「それを考えたとき、ムスカの事業はドハマリしました。世界では人口が増え、食料危機もささやかれている中、ハエの力で持続可能な社会に変えるなんてとても魅力的に思えて。でも虫は正直苦手なんですけど(笑)」

 最初はムスカの執行役員として広報を担当していたが、ある時創業メンバーからこんな打診があった。「CEOとして表に立ってほしい」。突然の申し出に最初は当然ちゅうちょした。「私はCEOの器ではありませんと断ったんですが、この事業は大きく成長してほしい。できることは何でもしたいと思っていたので、事業としてムスカが稼働し、次のCEOにバトンが渡せる状態まで責任を持つという形で、暫定CEOという役職になりました」

 今は自らムスカの広告塔として、事業を世の中に広めるために奔走する。「ハエはもともと食べ物にたかるなどマイナスイメージが強いです。ただ、うちのハエはサラブレッドでとても優秀なんです。その素晴らしさを伝えたい。ムスカの事業が成長して、私がCEOの座から離れることが当面の目標です」

 苦手だと思う仕事も、アイデア次第で楽しい仕事に変えることができる。そんなことを身をもって示してくれた流郷さん。「どんな場面でも自分の軸さえぶれていなければ、理想の働き方ができると思います」

「CEOに就いてからは、ファイナンスや会社法などインプットしながら高速でアウトプットしています」

取材・文/飯泉 梓(日経doors編集部) 撮影/花井智子