代表作『彼女のいる彼氏』が誕生 「私、最強だ」

 その直後、新潮社のウェブマガジン『ROLA(ローラ)』(現在は休刊)での連載が決まる。「まだサイバーにいたころ、このメディアに漫画を描けないかな、と思って売り込みに行ったら『サイバーなの?』と面白がってもらえて」。「ネームを描いてきて」と言われたのが1月。ROLAの編集長と飲みに行って、当時はもう関係が切れていた(私の他に彼女がいる)彼氏の話をしたら「それじゃない?」と言われ、それをテーマにした漫画を描くことに決定。1話目のネームを半日で描き上げた。

 「そこの編集担当者がすごく仕事ができる方で。『矢島さんを育ててスターダムにのし上げる』と言い切ってくれた。元『ニコラ』の編集長で、若い女の子を育てたいという思いを持っている人でした」。そして、その言葉通り、キャラの見せ方、ストーリー展開など、漫画のすべてを教えてくれた。そして生まれたのが、矢島さんの代表作『彼女のいる彼氏』だ。

 この連載を2年間、休載なく続けられたことが、かなりの自信になった。

 そのタイミングで、集英社のWEBコミックサイト『ふんわりジャンプ』(現在は休刊)からのオファーが舞い込んでくる。「“ジャンプ”と名のつく媒体であることに気持ちが高まり、勢いでバトントワリングを題材にしたネームを半日で描き上げました。だけど『ふんわりジャンプ』は主にエッセイが掲載されている媒体で、スポーツ漫画は求められておらず、もちろんボツになりました」

 その時、担当編集者の嗅覚が働いた。ネームをヤングジャンプ編集部へ持っていったのだ。 あれよあれよという間に『ミラクルジャンプ』(ヤングジャンプの増刊)での掲載が決まったが、その準備期間中に『ミラクルジャンプ』が休刊に。思いがけず、キングダムの原氏から助言されてからずっと頭にあった『週刊ヤングジャンプ』での連載が実現することに。

 「あのときは、面白いネームを短期間で描くこともできて、私、最強だなって思ってました」

 しかし、編集部から「ヤンジャンで戦っていくために『顔』の画力を上げてください」とのお達しがあり、『潔癖男子!青山くん』作者の坂本拓さんのもとに週2回通い、アシスタントをしながら、原稿を見てもらった。模写をしたり、ガイコツをいっぱい描いたり。ガイコツを描くのは「骨格の中の適正な位置にパーツを描く練習」だそうだ。半年後、満を持して、ヤンジャン連載スタート。「原先生から言われた通り、30歳になる1週間前に第1話が掲載されて」――順風満帆……のはずだった。