夫は就職先の土地に一緒に移住してくれた

 ここで、キャリアを振り返ってもらった。「これまで私が歩んできた環境では、女性は少数派でした。大学時代も同期10人のうち、女子は2人だけ。今いる観測所でも研究者約20人中、女性は2人です。気になるのは、助教、准教授、教授という任期のないポストに就く女性が限られているということ。求人情報では『男女共同参画の方針に基づき、業績が同じであれば女性を優先して採用する』と書かれていたり、女性限定の募集があったりと、ここ5年ほどは女性に対する追い風を感じてはいます」

 「周囲を見渡すと、職場というよりも、社会の側に問題があるような気もします」と田崎さんは続けます。「女性研究者には夫のキャリアを優先し、自分の仕事を手放す方も少なくありません。社会的に見て、女性がキャリアに関して希望を通しにくいという実態があるかもしれません」

 その点で自分はラッキーだった、と田崎さん。京都市内の民間企業に就職していた京大時代の同級生と、博士号取得前に入籍。2年後に出産。東京都三鷹市の国立天文台への就職が決まると、夫は勤務先の東京支社に異動を申し出てくれたという。三鷹市在住時代は、都心への大変な通勤を避けるため、夫は勤務先の在宅勤務制度を活用。さらには、オフィスを持たず、全社員がリモートワークするというワークスタイルのベンチャー企業に転職し、田崎さんが岩手県奥州市に移った後も家族皆での生活を継続できている。「夫と今3歳の娘には常に本当に感謝しています」

田崎さんが勤務する国立天文台・水沢VLBI観測所
田崎さんが勤務する国立天文台・水沢VLBI観測所