映像制作に興味を持ち広告会社でインターン

 「昔から音楽や絵を描くのが好きで、映像制作の仕事に進もうと考えていたんです。中でも、より多くの人に映像を届けられる広告に興味が湧いて、大学在学中にいくつかの広告会社のインターンに行っていたんです」

 現在の勤務先のインターン初日に、クライアントとのスキー場の企画の打ち合わせに同行した。スノーボードが好きだったこともあり、上司に話を振られると「若い世代がスノボに求めているもの」について熱弁を振るったと言う。

 「予想以上に私の意見を貴重なものとして受け止めていただいて、後にそのお仕事を受注することになりました。社会で意思決定権を持っている上の年代の方々は、こんなにも若者の言葉に耳を傾けてくれるのかと衝撃を受けました

 インターン開始から2週間後に「正式に入社しないか」という誘いを受け、正社員として入社することに。仕事が楽し過ぎて「大学に行っている場合じゃない」と思うほど、仕事に夢中になっていた。

スキー場の企画の打ち合わせで、スノーボードについて意見を熱く語った辻さん。「社会で意思決定権を持っている上の年代の方々は、こんなにも若者の言葉に耳を傾けてくれるのかと、衝撃的でした」
スキー場の企画の打ち合わせで、スノーボードについて意見を熱く語った辻さん。「社会で意思決定権を持っている上の年代の方々は、こんなにも若者の言葉に耳を傾けてくれるのかと、衝撃的でした」

 「入社して3カ月で、もともとローンチしていたお台場のナイトプールの仕事を一人で任せてもらえました。厳しい面もありますが、やりたいことがある人にとっては最高の会社だと思います。私はゲームやアニメ、アートなど好きなものがたくさんあるんですが、この仕事を始めて自分の『好き』が生かせることを知り、そこに価値を感じてもらえるんだと思うことができました」

14歳で単身スイスへ、「普通」に捉われずに生きる

 在学中に広告の世界に飛び込むことに迷いはなかったと話す辻さん。「普通」に縛られない行動力は、10代の頃から顕著だった。14歳で単身、スイスの全寮制学校へ留学することを決めたのだ。

 「日本では幼稚園から大学までの一貫校に通っていたのですが、穏やかで温かすぎる日常が続くことに『このままでいいのだろうか』と危機感を覚えて、全く知らない世界を見たいと思ったんです」

 自ら資料を集め、両親にプレゼンをして説得。自由な生き方を尊重する両親の後押しがあり、中学2年生からイギリス、スイスに留学、高校生活はアメリカで過ごした。

 「全寮制の学校だったため、同じ部屋や学校の隣の席に自分とは違う人種の人が座っているのが当たり前の世界。校則で髪の色を統一させるような『普通』という概念の作りようがないんです。多様性や自由を大切にしているのはその体験が大きかったと思います。その頃に触れた建築物やアート、カルチャーは、Tapistaの内装など、現在の仕事にインスピレーションを与えてくれています」