社交的ではない自分でも、「物づくり」で人を喜ばせることができる

 辻さんは、同年代の中ではナイトプールなどに遊びに行くようなタイプではなく、一人で物づくりをしたりするのが好きなタイプだ。日常会話など人とのコミュニケーションが苦手で、そこにコンプレックスを感じたこともある。

 「物づくりなど、好きなことにはいくらでも集中できるけど、いわゆる『報連相』や、日常会話で場を盛り上げるのが苦手なんです。それでも物づくりを通して、人を喜ばせることができる。ナイトプールなどで、お客さんが楽しく過ごしているのを見ると本当に感動します」

物づくりを通してお客さんを喜ばせられることに、とてもやりがいを感じます
物づくりを通してお客さんを喜ばせられることに、とてもやりがいを感じます

 クリエーティブディレクターという仕事は「全教科で平均点が取れる人間でなくても、1教科、2教科だけは誰にも負けない自信がある。そんな人間が輝ける世界」だと感じるそう。

 現在は入社3年目で、仕事の取り組み方に変化が現れてきたと言う辻さん。

 「昔は一人で頑張って仕事をしようとしてきましたが、最近はチームで仕事をする楽しさが分かってきました。プロジェクトごとに、企画の特性やクライアントさんのタイプ、目指すクリエイティブの方向性などを鑑みてベストチームを組むことで、一人の力をはるかに超えたものが出来上がっていく。『誰でもいい』じゃない、このメンバーだからこそというアウトプットが仕上がった時や、メンバーの特性や良さが100%引き立った時に、自分のこと以上に喜びを感じます。参加してくれた人全員が誇りに思えるような仕事を作っていきたいですね」

数字が分かるクリエーターを目指したい

 メディアでたびたび「女子大生なのに」と取り上げられることについて「注目していただけるのはありがたいこと」としながらも、ジェンダーの視点や、自らのキャリアを考える上で違和感を覚えているという辻さん。肩書や若さに依存せず「辻の仕事」として認められることを目指している。目標とする将来像は「数字が分かるクリエーター」だ。

 「クリエーターは数字に対する意識が弱いと思われがちなのですが、そのバランス感覚のあるクリエーターになりたいと思います。コストをかけずにどれだけいいものを作れるか、ビジネスとクリエートは相反していないと私の人生で証明したい。そのために組織作りや経営をもっと学んでいく道にシフトチェンジしていきます

 これから作りたいものを聞くと、「人生でやりたいことがあり過ぎる」という本人の言葉通り、アニメ制作や産後の女性の支援施設作りなど、興味の対象の話が尽きることがない。社会人になれば好きなことは諦め、趣味にするしかないと考える人も多いが、辻さんの場合は真逆だ。

 「本気で『好き』を貫き通すと、好きなことが仕事になるんだと感じています。もちろん、『好き』を追求して仕事にするには楽しさだけでなく、厳しさもあります。並々ならぬ努力の過程を楽しめるかどうか。そして、その先に出てくる制作物への思いが、さらに楽しさを加速させるものだと思います。

 最近は、就職に関する悩みを相談されることも多いんですが、『仕事をするって学生時代より楽しいぞ』と伝えたいですね」

人生でやりたいことが多過ぎます。いつか、アニメ制作もしたいし、産後の女性をサポートできる施設も作りたいですね
人生でやりたいことが多過ぎます。いつか、アニメ制作もしたいし、産後の女性をサポートできる施設も作りたいですね

取材・文/都田ミツ子 写真/吉澤咲子 構成/浜田寛子