3カ月以上音信不通 大人に搾取されかけた

 クライアントと連絡が取れない。働いた分の報酬がいつまでたっても支払われない――。

 2018年、フリーランスとして業務委託で企業から仕事を受注し始めた朝比奈さんは、想像もしなかった事態にがくぜんとしました。

 「その企業とは3カ月以上音信不通になり、とても悲しい思いをしました。『信頼している人から紹介されたクライアントだから安心だろう』とか『いい人そうだから心配ないよね』とか……今振り返るとびっくりするくらい、大人を疑うということを知らなかったんですね。フリーランスとして働くためには、仕事の内容と報酬の関係をはっきりさせて、自分を守る意識も必要。当時は契約に関する知識も乏しかったと思います」

個人の肩書で働くリスク

 SNSなどで上手に自分の「好き」や「得意」を発信すれば、それを求める人とつながり、実績を積み重ね、会社員経験がなくても「働くこと」を始められるようになった現代。一方で、仕事を発注する企業側のリテラシーは向上せず、不平等な取引を強いられるケースは後を絶ちません。社会人経験の少ない学生なら、そのリスクはより高くなってしまうのです。

 朝比奈さんは泣き寝入りをすることなく、大学のキャリアセンターにアドバイスを求めました。労働局や弁護士にも相談して、法的な措置を講じる可能性をその企業に伝えた結果、やっと報酬を支払ってもらうことができたといいます。

 「個人で働いていると、仕事量の調整が難しいですし、私のように何かトラブルに見舞われたとき、一人で抱え込んでしまいがちです。実際、周囲で企業のインターンシップなどに参加した知人に話を聞いてみても、『就活に役立つから』などという理由で長時間の労働を強いられ、ほとんど報酬が出なかったという例がありました」

 「チーム」を組むことで、企業側との交渉がしやすくなると考えた朝比奈さん。活動の成果が見えてくるのはまだまだこれからですが、「メンバーそれぞれの得意分野を生かして役割分担もできるようになったので、個人では受注するのが難しかった大規模な案件も受け入れられる体制が整ってきました」と語ります。

個人の肩書で仕事をする中での「負の側面」も経験し、より働きやすい環境を自分自身でつくり出すことに取り組んでいる
個人の肩書で仕事をする中での「負の側面」も経験し、より働きやすい環境を自分自身でつくり出すことに取り組んでいる