世界の人口増加に伴う食料危機が懸念されている中、たんぱく質が豊富、かつ繁殖力が高く、大量生産しやすいという点で注目されている昆虫食。コオロギの繁殖などの研究に携わっている太陽グリーンエナジーの井上寛菜さんに話を聞きました。

昆虫食の可能性を感じた

日経doors編集部(以下、――) コオロギの研究を始められたきっかけを教えてください。

井上寛菜さん(以下、井上) ヘビやカメなどのは虫類が幼い頃から大好きで、大学院でも研究をしていました。入社1年目のときに、ペットとしてトカゲを飼っていて、餌としてコオロギをあげているという話を上司にしたんです。すると、「コオロギも好きでしょ?」「研究をやってみないか」という声をかけられました。コオロギは苦手だったのでどうしようかとも思ったのですが、昆虫食の可能性を感じて面白い仕事ができそうだなと思いました。それでコオロギの研究に携わるようになりました。

コオロギの研究をしている井上寛菜さん。宇都宮大学大学院農業研究科卒業後、新卒で太陽ホールディングスに入社した
コオロギの研究をしている井上寛菜さん。宇都宮大学大学院農業研究科卒業後、新卒で太陽ホールディングスに入社した

―― 無印良品のコオロギせんべいが話題になっているなど、昆虫食は今スポットライトが当たっていますよね。

井上 世界の人口増加に伴う食料危機が懸念され、国連食糧農業機関が「食料危機の対策として昆虫食が有効だ」と発表していて、昆虫食が注目されています。なかでもコオロギはたんぱく源が豊富なんです。しかも、日本は四季があるので、一定の環境で昆虫を育てるのが難しいのですが、コオロギは比較的容易に飼育できるという経緯もあります。

―― コオロギ担当に抜擢されてからはどんな研究をしたのですか?

井上 最初はコオロギを増やしていくにはどうすればいいのかを考えて、コオロギの生態を見たり、実験をしたりしていました。コオロギは共食いをしてしまうのですが、どうやったら共食いをしなくなるのかを考えていました。また、コオロギは成虫になるまでに7回脱皮するのですが、その間に失敗して死んでしまうこともあります。失敗する要因は何か、それを改善するためにはどうすればいいのかといったことも、半年ぐらいかけて研究していました。