実家に戻る決断ができた理由は?

 そしてフリーランスという働き方に不安を感じていた頃、新型コロナウイルス禍に突入。仕事のオファーが激減し、2カ月間収入がゼロになるなど、これまでにない変化を経験した村井さんは、実家に戻ることを検討し始めました。

 「もともと父の体調があまり良くなかったので、母から『実家に戻ってきてくれないか』と言われていたんです。ただ、東京での仕事が充実していたため、親には『もう少しだけ待ってほしい』と伝えていました。そんなときにコロナ禍に突入し、さらに父の体調も悪化し始めて。私自身、将来結婚して子どもが生まれたら、実家の近くで育てたいという思いもあったので、フリーランスを辞めて実家に戻ることを考え始めました」

 とはいえ、人生を左右する決断をすぐに下すことはできず、親しい人や人生経験が豊富な年上の知人に相談しながら、半年くらい悩んだという村井さん。最終的に実家に戻ることを決意できた理由は、何だったのでしょうか?

コロナ禍をきっかけに、実家に戻ることを検討し始めたという村井さん
コロナ禍をきっかけに、実家に戻ることを検討し始めたという村井さん

 「相談していた周囲の人たちから、『いったん実家に帰っても、また映像制作の仕事をやりたくなったら東京に戻ってくればいい。フリーランスとして培った経験があるのなら、40代になっても再スタートできると思うから、一度実家に戻ってから考えてみてもいいのでは?』というアドバイスをもらったんです。この言葉を聞いて、私自身も『そうだな』と納得できたので、『今は実家に帰って家族と過ごそう。できるだけ親孝行をしよう』と思いました。

 また、仕事のオファー自体は、コロナ禍に突入してから半年後には戻りつつありましたが、収入が不安定であることには変わりないので、今は将来に備えて貯金をするためにも、毎月安定した収入を得られる正社員の仕事に就こうと思ったんです」

 そして2021年の春に実家に戻り、地元・兵庫で本格的に転職活動を開始した村井さん。当初は複数の転職サイトに登録して求人情報を探していましたが、年齢や条件面で折り合いがつかず、「転職の壁」にぶつかったといいます。

 そんな村井さんの転機となったのが、何気なく見ていたTikTok。下編では、TikTok がきっかけで転職に至った経緯や、面接を突破する秘訣、フリーランスと会社員のメリット・デメリットについても詳しくお伝えします。

取材・文/川辺美希 構成・取材時キャプチャ撮影/青野梢(日経xwoman doors)プロフィール写真/本人提供

下編「個人事業主→正社員 きっかけは、おじさんTikTok」では、次のストーリーを展開

■後悔しないために「譲れない条件」を設定
■30代・未経験転職に高いハードルを感じた
■面接で心掛けたことは?
■入社後のミスマッチが起こらなかった理由
■「フリーランス」のメリット・デメリットは?
■「会社員」のメリット・デメリットは?
■今後は「リーダーや管理職経験も積みたい」